みすず書房

崔南龍

チェ・ナㇺヨン(Namryong Choi)

1931年、神戸市生まれ。在日韓国人二世。通称名、南龍一(みなみ・りゅういち)。幼時に植民地下の朝鮮へ渡って父の実家で暮らすが一家は離散、父に続いて日本に戻る。1941年ハンセン病を発病し、父が自死したあと岡山県長島の国立療養所邑久(おく)光明園に入所。園内の創作会「島陰クラブ」に入って1948年の短編「黴(かび)」から執筆活動を開始。1957年ごろから作家・木島始の指導を受け、園外でも「黒いみの虫」が『文芸首都』で佳作として紹介される。1959年の国民年金法による障害福祉年金から除外された在日韓国・朝鮮人への年金支給要求運動のなかで、在日療友とともに生活記録集『孤島』をガリ版で発行。ハンセン病患者が隔離法廷で死刑となった「菊池事件」への再審請求や、在日外国人の指紋押なつ問題で独自の立場をつらぬき、ハンセン病胎児標本問題をめぐる運動にも影響を与える。2006年、「大和高田から天安へ──恨(ハン)百年」が第32回部落解放文学賞・記録文学部門(選者・鎌田慧)で佳作を受賞。2013年に視力を失うが、なおも光明園にあって、かつてのハンセン病療養所の情景を口述筆記で記録する。2017年8月死去。著書『猫を喰った話──ハンセン病を生きて』(「崔龍一」名義、2002)『崔南龍写真帖 島の65年──ハンセン病療養所邑久光明園から』(2006、以上解放出版社)『一枚の切符——あるハンセン病者のいのちの綴り方』(みすず書房 2017)。編著書『孤島──在日韓国・朝鮮人ハンセン病療養者生活記録』(解放出版社 2007)。