みすず書房

いかなる国家もそれぞれの憲法をもつ。しかし、この200年いらいの近代世界において、We the people……ではじまるアメリカ憲法にもまして、個性的で、原理的で、深い影響力をもったものは、ほかにない。
本書はこのアメリカ憲法の意味と歴史への入門であり、著者ビーァドを中心とする座談会のかたちをとったアメリカ政治の解説である。本書が出版された1943年は、アメリカが第二次大戦に参戦して3年目、政府権力(行政権)の行使が最大限に達した時期であり、国家の最大の危機に直面していた時期でもある。アメリカの“運命”の問われているこの時期に、ビーァドはいう、「立憲政治の要諦は、権力の制限にあるのです。デモクラシーの権力に対しても、制限のあるのが立憲政治なのです」言論出版の自由、アメリカ市民の権利のこの発揮は、歴史のなかでの普遍性を要求してやまない人類の栄光であろう。
知的誠実さにみちた社会科学者、また歴史家たる著者の軽妙かつ暢びやかな文章は、訳者のみごとな日本語の訳文によって、この古典的名著をもっとも親しみやすいものとしている。