みすず書房

近代日本の起原は、同時に近代ジャーナリズムの起原でもあった。そのもっとも代表的なのは朝野新聞であり、その記者、成島柳北・末広鉄腸の名は、明治初期に発揮された驚くべき自由感とともに歴史に記録されている。
本書はこの朝野新聞(明治5-26年)に関する最初の実証的研究である。創刊から終刊さらに再刊にいたる歴史、経営の動向、職制人員、社内行事、姉妹紙の絵入朝野新聞などについて詳述される。つづいて紙面に見える論調の変遷が示される。円転滑脱な雑録の柳北・硬骨な論説の鉄腸が両輪となって活気を与えていた時代から、犬養毅・尾崎行雄たちが入社して政論新聞へと様相をかえて行く。この論説・記事による年表は、また主要記事索引としても役立つであろう。最後に総計76にのぼる表と13のグラフからなる資料編がある。明治前期諸新聞の発行部数・販売収入・普及度など、貴重な統計が示される。
「本書は明治前期新聞史・文化史研究に寄与し極めて有益な便宜をあたえる」と、東京大学新聞研究所の内川芳美教授は推薦のことばを寄せられた。なお著者は朝野新聞共同創刊者である鵜飼渚の嫡孫にあたり、公務を退いてのちの十年、精緻な調査がここに結実をみたものである。