みすず書房

フランス革命の歴史において最も欠けているのは、逆説的であるが、〈反革命〉の歴史である。反革命は、単なる過去、アンシャン・レジームへの回帰ではない。それは革命それ自体と同様に発展し、革命とひとしくその理論家を有している。しかも、それはフランスの国境を越え、ヨーロッパ的現象となった。

バスティーユ占領からナポレオンが帝位にのぼるまで、本書の扱ったこの期間が、革命史に最も特徴的な時期であった。このとき、反革命の行動は最も多様に、最も劇的に展開された。農民の蜂起、都市の反乱、スパイ機関のあいだの闘争、白色テロ、そして列国の軍事的干渉——これらが、本書では詳細にえがかれている。

また、反革命の理論も、この時期に精錬された。エドマンド・バーク、ジョゼフ・ド・メーストル、ルイ・ド・ボナール、シャトーブリアンたの思想が形成され、それらは普遍的価値を志向し、20世紀のファシズム思想へもつながっていく。

本書はフランス革命以来のヨーロッパ史の知られざる部分である。革命史のポジではなく、ネガである。この新しい視角は、従来の歴史にない新鮮な事実を照らし出すであろう。