日本の精神鑑定
昭和10年12月の大本教事件をはじめとし、昭和43年6月の横須賀線爆破事件に至るまで、30年間、16の事件の犯人の精神鑑定の記録がここに収録される。
昭和史の激しい情況のなかで、昭和11年の2・26事件、12年の芦溝橋事件、16年の太平洋戦争、20年の敗戦、25年から28年の朝鮮戦争、35年の60年安保闘争と、時代はめまぐるしく推移している。その時代の影を色濃く落して、これらの犯罪事件もまた、激しい時代情況の陰画をくりひろげている。
2・26事件の3ヵ月後に起った阿部定の愛欲の事件、昭和20年から21年の小平事件、極東裁判のさなかに突然起った大川周明の問題、23年の帝銀事件、25年の金閣放火事件、28年のメッカ殺人事件、39年のラインャワ一大使刺傷事件を、この精神鑑定の資料は明確にあとづけて、その時代と人間、なまの、人間性に根ざした真実そのものの姿をありありと浮びあがらせ、戦慄をさえ起させるのである。
人間が人間に対して行う裁判というものの、一層の正確さを期して、精神医学の知識と経験の重要性が深く認識されるようになった。精神医学の専門知識が裁判をも含めた司法行政の科学性に寄与しようとする、その一つの大きな領域に、精神鑑定がある。たとえば、刑事事件の被告人が、事件当時自己の行為に対して責任をもち得る精神状態にあったか否か、また裁判にあたって正常な答弁能力をもっているか否か。鑑定は非常に困難なものが多く、鑑定人は大きな努力と苦心を払う。本書はその苦心の結晶であるばかりでなく、学問的にも深い内容をもつ、初めて世に問う貴重な資料である。
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「日本の精神鑑定」の書籍情報:
- A5判 タテ210mm×ヨコ148mm/656頁
- 定価 8,190円(本体7,800円)
- ISBN 4-622-02230-3 C3047
- 1973年1月8日発行






