みすず書房

ロールシャッハ 精神医学研究

HERMANN RORSCHACH: AUSGEWAHLTE AUFSATZE

判型 A5判
定価 4,730円 (本体:4,300円)
ISBN 978-4-622-02236-7
Cコード C3047
発行日 1986年6月20日
備考 現在品切
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ロールシャッハ 精神医学研究

初めは純粋に遊びのような感じを与える実験——偶然にできた左右対称の、一部は多色のインクのシミを判断させること——が、いかにして「人格」のもっとも隠されている側面を照らし出す巧みな科学的方法にまで仕上げられていったか?

単純な手段で複雑な関連を発見し、新しい問題を開拓することに成功するときほど研究者の創造的天性が明らかになるときはない。ロールシャッハはそのような天性の人であった。最初の本『精神診断学』が公刊されてわずか9ヵ月後、37歳で夭折したその生涯はあまりにも劇的であり、未知の部分が多い。

本書にはロールシャッハを深く敬愛するエレンベルガーによる伝記、妹による思い出を冒頭におき、ロールシャッハの研究論文11篇を主軸とし、ビンスワンガーによる『精神診断学』覚書、編者による(ユング派の立場からの)ロールシャッハの病跡学的解明が収められ、さらにロールシャッハ自身によるロールシャッハ・テストの解釈事例を付している

ロールシャッハの論文は、精神疾患に関する精神分析学的事例研究およぴスイスの一地方の宗派研究が圧巻をなし、時代と風土を背景としたロールシャッハ自身の人間像——実践的な検査法の考案者であるばかりでなく、芸術性ゆたかな人間の本性を深く穿つ思想家、探求者であった彼の面影をくっきりと浮かび上らせている。

目次

第一部 伝記
H・ロールシャッハの生涯と業績……アンリ・エレンベルガー
少年時代のヘルマン……A.ベルヒトルト‐ロールシャッハ

第二部 学問的研究
「反射幻覚」とその類似現象について
失敗した昇華の一例と名前忘却
もうろう状態での馬泥棒
一精神分裂病患者の絵に関する分析的覚書
神経症患者における友人の選択について
一精神分裂病患者の素描の分析
連想実験、自由連想及び催眠を用いての健忘の除去
スイスの宗派と宗祖に関する若干の考察
スイスの宗派形成に関する付加的考察
知覚診断的実験について
H・ロールシャッハの『精神診断学』への覚書……ルードウィッヒ・ビンスワンガー
スイスの二人の宗祖(ビンゲリとウンターネーラー)
十一番目の、あるいはエメラルドの書板(Tabula undecima seu smaragdina)……K.W.バァッシュ
付 ロールシャッハ自身による診断的研究の一例と明暗反応に基づくその補完……エルンスト・シュナイダー

訳者あとがき
注・文献