みすず書房

「著者の視線は、歴史学が見落とした〈歴史の精神史的基底における或る重要なダイナミズム〉へとまっすぐに注がれていく。そして、かの〈攘夷〉派志士たちの掲げた〈綱領〉以前の次元に、その行動と決意との中に、〈横議〉〈横行〉〈横結〉という新しい思想的契機を発見し、それこそが〈旧社会の体内〉に生み出された〈新国家の核〉であることを指摘する。……こうして反時代的な視点から復元された歴史は、あらためて〈《維新の原理》を《今日の仕事》に生かす〉可能性を同時に開示するものとなるのである」(解題より)

本書は、表題作をはじめ、1959年から66年の間に近代日本思想史のいくつかの局面を主たる対象として著者が執筆した論文・エッセイによって、新たに構成された。ここでは、〈維新の精神〉の発見や〈大正デモクラシー〉の批判、〈ユートピア思想〉への問い直しを通して、〈戦後〉と〈安保〉をめぐる経験が、異なった文化間の比較と歴史的遡及による広大な視野の中で再検討され、さまざまな〈普遍〉への通路を開くものが模索され、語られるであろう。