みすず書房

ノーマ・フィールドの『天皇の逝く国で』は、日本人が書けなかった「日本の今」を描き、読者の胸を突いた。彼女は第二次世界大戦後の東京に混血児として生まれ、現在はシカゴ大学で日本文学・日本文化を教える。

90年代に入って、はじめて日本語でエッセイを書いた。生まれ育った東京の家の日常を伝える「祖母のくに」、シカゴ大学での〈セプテンバー〉との出会いを描いた「秘書の話」、義父を追悼する「嫁ならざる嫁」、そして小学生時代からの愛読書を語る「東京の『ジェイン・エア』」。

本書の後半には英語からの翻訳を2篇。シカゴ大学入学式の記念講演「教育の目的」は新入生に肩の力を抜かせ、新鮮な感銘をあたえた。そして戦後50年を契機に書かれた「戦争と謝罪」は、『天皇の逝く国で』以降に深められた思索が結晶した貴重な論文である。

〈ことばと世界のあいだを行き来して、その両方を生きること〉を実践した、奥行きのあるエッセイ集」(「あとがき」より)

巻末に「教育の目的」の原文を付す。

目次

祖母のくに
秘書の話
嫁ならざる嫁

東京の『ジェイン・エア』

教育の目的 〔大島かおり訳〕
戦争と謝罪 〔大島かおり訳〕

あとがき
付録 The Aims of Education (「教育の目的」原文)