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インフォームド・コンセント

患者の選択

A HISTORY AND THEORY OF INFORMED CONSENT


医療のあり方が大きく変わろうとする今、「インフォームド・コンセント」というキーワードの理解が急務になった。
しかし実際には、想像以上に混乱があり、誤解がある。それはなぜだろうか。原因は、この概念がつくられた歴史的経緯が込み入っていることと。さらに、道徳、法律、医療など、アプローチによって捉え方が違うからだろう。この表現が生まれた米国においてさえ、法が想定するインフォームド・コンセントと、臨床医療の実績のあいだには、ながいあいだ隔たりがあった。
本書は、インフォームド・コンセントとは何か、その理論と歴史を、あらゆる角度から、しかもわかりやすく論じた、はじめての本である。
まず第一部で、この概念の基礎となる考え方を、道徳哲学と法律学の蓄積のなかから説明する。第二部は、インフォームド・コンセントの歴史。欧米の判例の積み重ねと米国の政策の発展を追ううちに、インフォームド・コンセントの輪郭がはっきり見えてくる。最後の第三部では、著者たちがみずからの立場を説明し、実質的なインフォームド・コンセントを達成するための条件をていねいに模索する。
この三部構成の本を流れるテーマは、ただ一つ、医師の「善行」に頼る考え方から脱し、患者の自律(自己決定)の条件をどう整えるかということだ。「依らしむべし、知らしむべからず」の感覚が、医療従事者だけでなく、患者の側にも深くしみこんでいる日本で、今もっとも切実なテーマがここにある。


「インフォームド・コンセント」の著訳者:

ルース・R・フェイドン
Ruth R. Faden
ジョンズ・ホプキンズ大学準教授。健康政策、健康管理、行動科学、健康教育を担当する。同時にジョージタウン大学ケネディ倫理研究所主任研究員。
※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
トム・L・ビーチャム
Tom L. Beauchamp
ジョージタウン大学哲学教授。ケネディ倫理研究所主任研究員。
※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
酒井忠昭
さかい・ただあき
1937年東京都に生れる。国際キリスト教大学、千葉大学卒業。東京都立駒込病院外科医長。同病院のターミナルケア・在宅医療担当を経て、現在ライフケアシステムのメディカル・ディレクター(在宅ホスピス担当)
※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
秦洋一
はた・よういち
1940年高知県に生れる。国際基督教大学卒業後、朝日新聞社に入社。『モダン・メディシン』副編集長。調査研究室主任研究員、編集委員を経て、現在は医療ジャーナリスト。「患者の権利」「尊厳死」「介護問題」などをテーマに執筆をつづける。訳書バーケット『科学報道とは何か』(紀伊國屋書店 共訳)ビショップ『遺伝子の狩人』(科学同人)その他
※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。

目次

序文
謝辞
第一部 基礎となる考えかた
1 道徳理論の基礎
原則、規則、権利
道徳性の概念 諸原則による意味づけ 義務に相関する権利
三つの原則
自律性の尊重 善行 公正
道徳的原則と権利の比較評価
結論
2 法的理論の基礎
道徳原則と法的権利
コモン・ローと法理
責任論 開示要件 因果関係 除外例
憲法とプライバシー権
プライバシーの請求としてのIC プライバシー訴訟の将来志向性
結論
第二部 インフォームド・コンセントの歴史
3 臨床医学のなかの見解と実践の解釈の問題
「同意」の歴史の解釈:このプロジェクトのある種の危険性
対立するふたつの歴史的解釈
ヒポクラテスから米国医師会にいたる綱領と論文
古代の医学 中世の医学 啓蒙期の医学 近代の
英米医学 医学的善行主義の伝統
一九世紀と二〇世紀初期の米国の医療
同意と拒否にかんする事例 秘密、善行的な嘘と自衛策
ICの到来
ICについて知らされるようになった時代:1917-1972年
新たな医学倫理の展開
結論:ほんとうは、なにも変わらなかった
4 同意と法廷:法理論の登場
法律の読みかた
二〇世紀以前の同意
一八世紀後期の英国:スレーター判決 一九世紀の米国の判例における暴行と医療ミス
二〇世紀初期の判例:基本的同意の誕生
シュレンドルフ以前の判例 シュレンドルフ事件 初期の判例がはたした役割
1917-1972年:同意は情報をともなうものになったサルゴ判決と暴行
ネイタンソン判決と過失
1972年-現在:ICの発展
カンタベリー判決 カンタベリー後:トルーマン判決
成文法の戦略
結論
5 研究倫理における同意要件の展開
生物医学における同意
ニュルンベルク綱領 ヘルシンキ宣言 有力な学術刊行物 諸事件をめぐる論争
行動科学における同意
心理学に綱領が生まれた 同意と欺瞞にかんする初期の論争 論争をよんだ事件と専門家の反応
研究行動における倫理的原則
結論
6 ヒトを対象にした研究にたいする連邦政策の発展
初期の連邦の認識:1962-1974年のふたつの厚生省機関
初期のNIH臨床センターの政策 FDA政策の形成
NIH政策の形成
その後の連邦の発展:ふたつの委員会と1974-1983年の新条例
生物医学・行動科学研究におけるヒト被験者保護のための国家委員会:1974-1978年 1981年米国厚生省の改定条例 医学、生物医学・行動科学研究における倫理問題研究のための大統領委員会:1980-1983年
結論
第三部 インフォームド・コンセントの理論
7 自律性の概念
自律性とIC
人間とその人間の行動の区別 自律的行動の段階
実質的な自律的行動
自律的行動の三つの条件
意図性の条件 理解の条件 非支配の条件
真正性は必要な条件か
熟慮のうえの受諾としての真正性 真正性の条件の再定式化の可能性
結論
8 ICの概念と能力
ICのふたつの概念
ICの分析 意味1自律的権限付託としてのIC
意味2有効な同意としてのIC 意味1と意味2の関係
同意する能力:門番役としての概念
法的能力の本質と段階 能力の概念の基準としての機能 心理学的能力、合法的な権限付託、自律的人間
結論
9 理解
理解と権限付託
実質的理解の基準
権限付託の行為の理解 権限付託する内容の理解
理解と開示の基準
通常の開示基準の不備 開示からコミュニケーションへ:理解の主観的基準 核心の開示と理解の共有:客観的基準 情報の留保 効果的コミュニケーションによる理解
コミュニケーションと情報の理解
言語、推理、背景となる知識の問題 危険と不確実性
情報過多、ストレス、病気の問題
実質的理解の確認
結論
10 強制、操作、説得
強制
強制の本質 脅威と報奨の申し出 抵抗性の主観的基準 「強制的状況」
説得
説得の本質 警告と予測 理由と正当とされる考え
自己説得
操作
操作の本質とタイプ 選択肢の操作 情報の操作
心理的操作 役割による制約の問題
結論

訳者あとがき
索引

この本の関連書


「インフォームド・コンセント」の画像:

インフォームド・コンセント

「インフォームド・コンセント」の書籍情報:

A5判 タテ210mm×ヨコ148mm/408頁
定価 6,300円(本体6,000円)
ISBN 4-622-03794-7 C1036
1994年10月4日発行

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