みすず書房

地質学の歴史

UNE HISTOIRE DE LA GEOLOGIE

判型 四六判
頁数 376頁
定価 5,280円 (本体:4,800円)
ISBN 978-4-622-03958-7
Cコード C3044
発行日 1997年6月6日
備考 現在品切
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地質学の歴史

古来、人々は、地球の構造と歴史とについてどのような思索を重ねてきたのだろうか。山の形成、化石の意味、火山、聖書の記す大洪水、地球の年齢などをめぐって議論は綿々と続けられてきた。
地球の歴史の歴史、つまり史的地質学史の前史は、アリストテレスやストア派の宇宙観に始まる。コペルニクスとデカルトが世界の中心から地球を追いやり、地球ははじめて独自の考察の対象となった。ビュフォンは地球の時間の長大さと非可逆性を把握し、地球史を記述した。が、真の地質学が誕生するのは18世紀末、「自然の古記録」すなわち化石と地層の踏査が行われるようになるときである。
古代ギリシアから現代のプレートテクトニクス理論まで、このスリリングな地質学思想の変遷の全体が、本書では「斉一説」的思考(連続主義)と「激変説」的思考(不連続主義)の相剋としてスリリングに捉えられる。記述は平明で、しかもフランス人らしいエスプリに富む。そしてなによりも、日本語ではじめて読むことのできる本格的な地質学の通史の登場である。

目次

序言
1 発端
紹介/海岸を遠く離れた貝殻/ストラボン対エラトステネス/山の破壊と時間/破局か平衡のとれた世界か/世界の形成/自然世界と道徳世界
2 世界の中心にて
歴史的枠組み/中世の「光明」/三万六〇〇〇年周期/水成説/火成説/数十億年/海の回転/地球の非対称/レオナルドと化石/空洞の崩壊
3 地球はいかにして形成されたか
ニコラウス・コペルニクス/ガリレオ/デカルト/地球は一つの太陽である/地球の形成
4 神の作品
世界の年齢は六〇〇〇年/起源への回帰/恐怖の山/山の効用/摂理の役割/大洪水か創造か/過去の偶然性
5 科学の誕生
ニコラウス・ステノ/失われた種、それとも自然の戯れ/フックとライプニッツ/地質学の原理/地層の傾斜/トスカーナの歴史/周期の区別/地球の古記録
6 山はいかにして誕生したか
山に攻め入る/テリアメド/アルプスの横断面/不思議の国/火山/海の退却/山の分類/ピレネーの場合/普遍的秩序?
7 歴史家ビュフォン
山の序列/ビュフォン/『自然誌』/地球の理論/火成説/循環から……/……非可逆性へ/失われた種/教会との衝突/時間/借用/挫折した歴史
8 産業に仕えて
産業革命/鉱山/二次山岳の細分/ヴェルナー/ゲオグノジー/地層の対比/分類欲/反現在主義/未来のない地球/デマレと火山説/スラヴィ
9 地下の火
ジェイムズ・ハットン/地下の熱/不整合/観察を予見する理論/花崗岩の起源/ソシュールとドロミュー/ゴーティエ/ニーダムと蒸気機関/ヴェルナーとハットン/反復される隆起
10 化石とともに
ドリュック/示準化石/並行する歴史/生物変移説/キュヴィエとブロンニャール/破壊と創造/ウィリアム・スミス/ラヴォワジェ
11 過去の世界と現在の世界
地質学の原理/コンスタン・プレヴォー/現在主義/連続性……/そして均衡/物理的安定性と生物的安定性/激変説の新しさ/革新的な現在主義……/そして退行的な現在主義/ライエルと山/変成作用
12 世界を築く激変
定向主義/隆起火口/エリ・ド・ボーモン/山系/地球の冷却/山脈の方向/五角形の網目/岩層の区分/階/反復的創造/生物変移説による説明/相/累積する知識/近代層序学
13 原初の時代
時間の分割/イギリスの地質学者たち/カンブリア系とシルル系/原初の動物相/激変論者の絶対年代/現在主義者の絶対年代
14 地殻の破砕
エドゥアルド・ジュース/緊張する大地/マルセル・ベルトラン/連続性の原理/繰り返される陥没/ユースタシー/ナップ/エミール・オーグ
15 漂移する大陸
アルフレート・ヴェーゲナー/大陸間の連絡/陸橋か移動か/アルプスの圧縮/アイソスタシー/筏のように/気候学的議論/討議/盟友/対流/歴史は目的をもたされている
16 海の誕生
海洋リフト/ベルトコンベアー/磁石の化石/決定論的な仮説/沈み込み/総合/歴史の不公平/連続的運動/死せざる不連続主義/継起的造山/失われた過去/明日の地質学者