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自己の分析

THE ANALYSIS OF THE SELF


「自己愛、つまり自己の備給という主題はきわめて広汎かつ重要である。それは人間の精神の内容の半分をさしているといってもさしつかえないからである」(序言)

のちに「自己心理学」の強力な提唱者として知られることになるハインツ・コフートの、第一の主著が本書である。従来、精神分析技法を用いては「治療不能」と考えられていた自己愛パーソナリティ障害を主題に据え、その治癒への道を示すことによって、この著作は多大の反響を呼び起こした。ここには、コフート理論の輪郭の大部分がすでに姿を現している。

コフートは、自己愛を対象愛(他者愛)よりも一段低いものとみなす考えを、西欧文明の価値観の反映であるとしてしりぞけ、自己愛そのものの発達経路を重視する。そして、治療者が共感をもって被分析者の鏡となることを通じて、傷ついた自已愛の修復に向かうことができる、と主張する。

「自我」と区別された「自己」の概念の探究、あるいは、心の垂直・水平分割といった本書のいくつかのキーワードは、現代心理学への貴重な貢献として見逃すことができない。同時に、今日増加しているといわれる軽症の障害への対応に際し、人間味あふれるコフートの理論は、広い応用の可能性を秘めているといえるだろう。


「自己の分析」の著訳者:

ハインツ・コフート
Heinz Kohut
1913年ウイーンに生まれる。ウイーン大学医学部卒業。同大学医学博士。1940年米国に渡り、シカゴ大学で精神学を学ぶかたわらシカゴ精神分析研究所で教育分析を受け、1948年大学卒業後、同研究所教育スタッフとなる。1964年アメリカ精神分析協会会長。本書(1971)により、自己心理学の立場を確立した。シカゴ大学の精神医学の講師を務め、1972年からシンシナティ大学客員教授も務めた。1981年歿。著書『自己の治癒』(本城・笠原監訳、みすず書房1995)『自己の修復』(本城・笠原監訳、みすず書房1995)など。
※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
水野信義
みずの・のぶよし
1943年岐阜県生まれ。精神医学専攻。現在、日本福祉大学社会福祉学部教授。論文「精神科医からみた不安神経症」など。
※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
笠原嘉
かさはら・よみし
1928年兵庫県生まれ。精神医学専攻。名古屋大学名誉教授。現在、桜クリニック院長。著書『精神科医のノート』(1976)『精神病と神経症』(1984)『外来精神医学から』(1991)『新・精神科医のノート』(1998、以上4点みすず書房)など。編著書、訳書多数。
※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。

目次

謝辞
序言
第1章 序論
 第一部 全能対象の治療的活性化
第2章 理想化転移
第3章 理想化転移の臨床例
第4章 理想化転移の臨床的治療的局面
成熟したかたちの理想化から区別される理想化転移/理想化転移の種類/理想化転移における徹底操作の過程とその他の臨床的諸問題
 第二部 誇大自己の治療的活性化
第5章 鏡転移の型――発達的考察にしたがっての分類
誇大自己の延長による融合/分身転移あるいは双子関係/狭義の鏡転移/臨床例
第6章 鏡転移の型――発生的‐力動的考察にしたがっての分類
一次性鏡転移/誇大自己の反応性動員/二次性鏡転移
第7章 鏡転移における治療過程
自己愛転移における行動化――治療的積極主義の問題/活性化された誇大自己に関する徹底操作過程の目標/鏡転移の分析における分析者の機能/徹底操作過程の手段としての鏡転移の意義/精神分析において治療的進歩をもたらす機制についての一般的見解
 第三部 自己愛転移の臨床的・技術的問題
第8章 自己愛転移についての一般的見解
理論的考察/臨床的考察
 外傷的な状態
第9章 自己愛転移の臨床例
第10章 理想化転移に対する分析者のいくつかの反応
第11章 鏡転移に対する分析者のいくつかの反応
第12章 自己愛パーソナリティの分析中にみられる治療的変形
 対象愛の増大と拡大/自己愛領分における漸進的統合的発展
 共感/創造性/ユーモアと英知
訳者あとがき
文献
症例一覧
索引

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自己の分析

「自己の分析」の書籍情報:

A5判 タテ210mm×ヨコ148mm/360頁
定価 7,035円(本体6,700円)
ISBN 4-622-04091-3 C3047
1994年3月9日発行

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