みすず書房

殺人と狂気

世紀末の医学・法・社会

MURDERS AND MADNESS

判型 四六判
頁数 472頁
定価 4,730円 (本体:4,300円)
ISBN 978-4-622-04107-8
Cコード C1047
発行日 1997年8月8日
備考 現在品切
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殺人と狂気

殺人を犯した者が「精神異常」と判断された場合、法廷は事件をどう裁けばよいのか?

自由意思と道徳的責任を基礎とした刑法理論に対する精神医学の闘いは、十九世紀を通じて続いた。病のために「合理的」な判断を奪われた者には、功利計算も応報主義も意味をもたない。臨床医学の発展は、新しい社会理論の台頭とも相まって、司法手続への医師の介入を不可欠のものとした。

都市では「危険な階級」の暮らしぶりがブルジョワの価値観に脅威を与えていた。労働者の飲酒、女性の「ヒステリー」。三面記事に頻出する専門用語が人々の意識に浸透した。病原菌=「変質者」の存在が家庭を滅ぼし、国家を危うくする……内外の政治的不安に照応して医学的な「取り締まり」への要請も高まっていった。

世紀末パリで起こったさまぎまな殺人事件の記録を素材に、近代の〈知〉と社会との興味探い相互作用を浮き彫りにする。犯罪学の登場とその背景、あらゆる言説に入り込む階級とジェンダーの影。分野を越えた視覚を提供する気鋭の労作。