みすず書房

動物には動物の歴史がある。人間の出現以後の歴史も、動物を主体として書き直してみたら、どのようなことになるだろうか。

ロベール・ドロールはヨーロッパ中世史を専門とするが、文学博士・理学士をも取得し、これまでの多数の著書では一貫して、いわゆる自然環境を含めた歴史を描いてきた学者である。歴史学(人間の)はもちろんのこと、動物学、気候学、考古学その他にわたる厖大な知識、あるいは文献、図像、発掘物など多様な資料を駆使して、本書でドロールがめざすのは、「歴史学と動物学の両面を合わせ持つ動物史学(zoohistoire)」の創始だ。

無脊椎動物から野生脊椎動物、家畜動物、そして空想上の動物までもオンパレードで登場させる前半部で、動物史の方法と課題が論じられ、また動物史が概観される。さらに後半のモノグラフィーで問題は深く掘り下げられる。動物の歴史にふれる数ある本の中で本書がきわ立つのは、このモノグラフィーの広さと深さだろう。カ、バッタ、ミツバチ、ニシン、オオカミ、ゾウ、アナウサギ、ネコ、イヌの歴史が、これほど雄弁に、語られたことがあるだろうか。

目次

はじめに


I 動物の歴史を書くために
過去の時代の動物——その知識と研究
動物の歴史と人間の歴史

II 無脊椎動物
原生動物から頭足類まで
カ——ハマダラカとマラリア原虫——マラリアの生活環
バッタ
ミツバチ

III 野生脊椎動物
カワヤツメウナギからゴリラまで
ニシン
オオカミ
ゾウ

IV 家畜脊椎動物
家畜化——家禽、ヒツジ類、ウシ類
アナウサギ
ネコ
イヌ