一次愛と精神分析技法
PRIMARY LOVE AND PSYCHO-ANALYTIC TECHNIQUE
精神分析学の歴史は、ウィーン、ブダペスト、ロンドン、ベルリンなど各都市のそれぞれが果たした役割抜きには語れない。ブダペストに生まれ育った本書の著者バリントは、その地に依拠しつつ、若き日に理論色の濃いベルリンの雰囲気に触れ、ナチスドイツを逃れてロンドンに亡命して、後半生を送った。恩師フェレンツィの考えと実践を継承・発展しながら、各都市の学派の「セクト主義」を排して活動してきた著者は、その対象関係論をはじめとして、フロイト以後の世代の最も重要な精神分析医になった。
本書はその生涯の活動を刻印した主著であり「自我の初期発達段階、一次対象愛」「エロスとアフロディテ」「愛と憎しみについて」など欲動と対象関係をあつかった第1部と、「性格分析と新規蒔き直し」「精神分析治療の最終目標」「転移と逆転移」など技法の問題を論じた第2部、それに第3部・訓練の問題の全20章から成る。親と子、男と女、さらに同性の間で交感される愛と性と「やさしさ」について透徹した分析を加えたこの書を、専門家以外の読者にも提供したい。
「本書が中井久夫氏らの訳で世に出るのは、著者にも読者にも、また著者と浅からぬ縁のあった私にも、大変な幸運である」(土居健郎)
「一次愛と精神分析技法」の著訳者:
- マイケル・バリント
- Michael Balint
- 1896年ブダペストに生まれる。ブダペスト大学医学部を卒業後、妻アリスとともにベルリンに移り、ハンス・ザックスの下で教育分析を受ける。その後ブダペストに戻り、シャーンドル・フェレンツィについて教育分析を終えた。フェレンツィとの深い関係は1933年のその死まで続いた。同年、ブダペスト精神分析診療所長になって以降、バリントは独自の構想を展開しはじめる。1939年、ユダヤ弾圧を逃れてイギリスに亡命、国内を訪ね歩きながら、最終的にロンドンに定住した。フロイト以後の精神分析に多大な業績を残して、1970年、心臓発作のため74歳の生涯を終えた。本書以外の主な著作として『スリルと退行』(1959、邦訳、岩崎学術出版社)『治療論からみた退行』(1968、邦訳、金剛出版)がある。
- ※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
- 中井久夫
- なかい・ひさお
- 1934年奈良県に生まれる。京都大学医学部卒業。現在甲南大学文学部人間科学科教授。著書『中井久夫著作集――精神医学の経験』全6巻別巻2(岩崎学術出版社、1984-91)『最終講義――分裂病私見』(みすず書房、1998)ほか多数。訳書 バリント『治療論からみた退行』(金剛出版、1978)『スリルと退行』(共訳、岩崎学術出版社、1991)エレンベルガー『無意識の発見』上下(共訳、弘文堂、1980-81)のほか、みすず書房からサリヴァンをはじめ多くの翻訳がある。
- ※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
- 森茂起
- もり・しげゆき
- 1955年神戸に生まれる。京都大学教育学部大学院博士課程修了。教育学博士。現在甲南大学文学部人間科学科教授。著書『災害と心の癒し』(共著、ナカニシヤ出版、1997)。論文「「甘え」と一次愛――土居とBalintによる心の原初領域の把握」(『心理臨床学研究』、1996)ほか。訳書 バリント『スリルと退行』(共訳、岩崎学術出版社、1991)。
- ※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
- 桝矢和子
- ますや・かずこ
- 1941年神戸に生まれる。甲南大学文学部英文学科卒業。1965-1990年、西谷啓治博士に師事、また1981年から1997年までJames Kirwan博士に師事して英文学を学ぶ。主婦、甲南大学非常勤講師。「自己の在りよう、自己と他者との関係」を問いつづけて今日に至る。
- ※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
この本の関連書
「一次愛と精神分析技法」の画像:
「一次愛と精神分析技法」の書籍情報:
- A5判 タテ210mm×ヨコ148mm/416頁
- 定価 7,350円(本体7,000円)
- ISBN 4-622-04111-1 C3047
- 1999年3月18日発行