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PTSDの医療人類学

THE HARMONY OF ILLUSIONS


「私たちの知らない太古から、人類は、悲哀と悔恨の感情、とりかえしのつかない喪失感、戦慄と恐怖の感覚などの記憶にさいなまれてきた。しかし、19世紀以後100年のうちに新しい型の苦痛な記憶が出現した。これがそれ以前の記憶と違うのは〈外傷性〉という、それまで同定されていなかった心理状態を発生源とし、これまたそれ以前には知られていなかった型の忘却である〈抑圧〉と〈解離〉とにリンクしていることである。この新しい記憶が今日もっともよく知られているのは、心的外傷後ストレス障害(PTSD)という精神の病いと結びついている場合である。」

PTSDは1980年、アメリカ精神医学会がその公式疾病分類(DSM-III)に採用して以来、急速に注目されるようになった。それまで少数の精神科医だけが口にしていたこの言葉は、今日では結核やマラリアなみに一般公衆の知るところになり、映画や小説の題材になり、天災人災を扱うテレビや新聞記者の主要問題になった。だが、PTSDとは時代を越えた障害、また単一の障害実体なのだろうか。歴史の所産なのではないだろうか。気鋭の医療人類学者が、鉄道脊椎、ヒステリー、シェルショックなど外傷性記憶の起源から、DSM-IIIの検証、現在の「国立PTSD治療センター」の実体調査にいたるまでを詳細に描き、PTSDの可能性と問題点を明確に示す。


「PTSDの医療人類学」の著訳者:

アラン・ヤング
Allan Young
1938年アメリカ合衆国ペンシルヴァニア州フィラデルフィア生まれ。1959年ペンシルヴァニア大学人類学部卒業。1974年同大学人類学部博士(Ph.D)。ニューヨーク大学などをへて、現在カナダ・ケベック州モントリオール(モンレアル)のマッギル大学医療社会研究学科主任教授、人類学科・精神医学科教授。著者は本書によって1998年度ウェルカム医療人類学賞を受賞した。
※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
中井久夫
なかい・ひさお
1934年奈良県に生れる。京都大学医学部卒業。現在甲南大学文学部人間科学科教授。著書『中井久夫著作集――精神医学の経験』全6巻別巻2(岩崎学術出版社、1984-91)『最終講義――分裂病私見』(みすず書房、1998)ほか多数。訳書にエレンベルガー『無意識の発見』上下(共訳、弘文堂、1980)のほか、みすず書房からはサリヴァン『現代精神医学の概念』、『精神医学の臨床研究』、『精神医学的面接』、『精神医学は対人関係論である』『分裂病は人間的過程である』、ハーマン『心的外傷と回復』、さらに『現代ギリシャ詩選』、『カヴァフィス全詩集』、『リッツォス詩集 括弧』ヴァレリー『若きパルク/魅惑』などが刊行されている。最近作にはバリント『一次愛と精神分析技法』(共訳)『エランベルジェ著作集』(全3巻)がある。
※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
大月康義
おおつき・やすよし
1952年北海道旭川市生まれ。北海道大学理学部数学科、札幌医科大学卒業。現在こぶし神経クリニック勤務。論文「憑依と精神科臨床――歴史と文化の視点から」(『臨床精神医学講座』23所収、中山書店、1998)。
※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
下地明友
しもじ・あきとも
1947年沖縄県宮古島生まれ。熊本大学医学部卒業。現在熊本大学医学部精神神経学講座助教授。論文「臨床空間の「とき」と「ところ」」(『現代のエスプリ』335巻所収)他。
※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
辰野剛
たつの・つよし
1954年長野県生まれ。昭和大学医学部卒業。現在精神医学研究所東京武蔵野病院勤務。
※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
内藤あかね
ないとう・あかね
1965年東京生まれ。南山大学文学部卒業(文化人類学専攻)。1993年ジョージ・ワシントン大学大学院アートセラピー学科修了。文学修士。現在甲南大学文学部非常勤講師・同大学カウンセリング・センター所員。
※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。

この本の関連書


「PTSDの医療人類学」の画像:

PTSDの医療人類学

「PTSDの医療人類学」の書籍情報:

A5判 タテ210mm×ヨコ148mm/512頁
定価 7,350円(本体7,000円)
ISBN 4-622-04118-9 C3047
2001年2月15日発行

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