みすず書房

「写真家と自称、他称されている諸氏にお聞きしたい。一体あなたたちは「だれ」なのか。……私が本書でまとめた小論で明かそうとしたことは、「だれ」に係わる。写真家とは「だれ」か、という〈写真家の正体〉を明かそうとした。そうして、ここで触れた写真家たちを記憶に留めることであった。」
ロバート・フランク、ダイアン・アーバス、ルイス・ボルツ、ヨゼフ・クーデルカ、ピーター・ビアード、アウグスト・ザンダー。いずれも与えられた人間の条件を引き受け、独自の仕方で、世界が出現するために写真を駆使した人たちである。
自死を遂げた収容体験者ジャン・アメリーから学んだ「ディスタンス=よそよそしさ」を考察の軸としながら、60年代のアメリカ社会、戦後の「壁の向こう側」、無国籍者となったエクサイルの生活、現代における風景の消滅など、それぞれの作品を鑑賞するのではなく、写真家を公的空間のうちに描き出そうとした、「小言幸兵衛」による辛口批評。

目次

ロバート・フランク
ダイアン・アーバス
ルイス・ボルツ
壁の向こう側
ヨゼフ・クーデルカ
ピーター・ビアード
アウグスト・ザンダー
しばしの無沙汰へのあとがき