みすず書房

大阪万博・太陽の塔に代表される作品群、あるいは「芸術は爆発だ」「グラスの底に顔があってもいいじゃないか」等CMでTVに登場してマスコミを賑わせた岡本太郎とはどういう人物だったのだろう。

岡本一平・かの子を親として生まれ、戦前、パリに留学、カンディンスキー、アルプ、ブランクーシ等を主要メンバーとするアプストラクシオン・クレアシオン協会会員になり、第1回国際パリ・シュルレアリスト展には『傷ましき腕』を招待出品、ブルトンに注目されている。一方、ひたすらパリの流行をなぞってフランス帰りの絵描きとして帰国・活躍する邦人の行動に疑問を持ち、ソルボンヌに入学し、哲学・社会学・民族学を修め、マルセル・モースにつき、バタイユの秘密結社にも参加。

最後の引揚船で帰国した岡本太郎は、瀧口修造が検挙されるとまもなく、初年兵として兵役につき中国を転戦し、敗戦後は、様々なジャンルで創作活動を始めるとともに、縄文文化再発見など、日本という国を見直すフィールド・ワークを始める。

本巻には、若き日の岡本太郎の時代状況と行動を主に収録する。華やかなパリでの活躍の一方、戦後日本の美術状況、そして常に日本=日本人とは何かを問わずにはいられない青年太郎の息吹が余すところなく活写されている。全5巻。