みすず書房

パリでの10年、中国戦線で現役初年兵から始まる兵役4年、収容所での1年。この15年を経て、昭和21(1946)年6月、岡本太郎は復員してきた。

「敗戦後の日本に帰ってきた。栄養失調直前のやせ衰えた身をひきずって、やっとわが家のある青山までたどり着くと、あたりは一面の焼け跡。残酷な荒野を見わたす思いがした」。身ひとつで帰って来た太郎。35歳になっていた。

この敗戦日本の焼け跡から、今につづく岡本太郎の活動は始まる。

画家としてのモダンアートの復興、彫刻、モニュメント、壁画、建築、書、写真、デザイン、そして原日本を求めての旅と多くの著作……。

『リリカルな自画像』に続く本書は、前線での兵役時代からの太郎の素顔をたどる。

「グラスの底に顔があってもいいじゃないか」「芸術は爆発だ」などメディアをとおしての活動、そして大阪万博・太陽の塔など、話題にこと欠かなかった岡本太郎は、文字どおり、戦後日本を駆けぬけていった。