みすず書房

《写真をとらせて頂きたいのですが》
《いいとも、暗すぎはしないか……》
矢内原は日夜、ジャコメッティを撮り始めた。アトリエで、カフェで、故郷の村で。カメラはキャノンIVSb、50年代日本のカメラ工業力を世界に問う最高機種であった。
人生の一時期、たまたまこの類い希な人物に出会い、そのモデルをつとめることになった矢内原は、その言葉を手帖に克明に書きとどめた。この『アルバム』は、その文字による記録に対し、写真による記録といえよう。何を記録しようとしたのか。矢内原は言う、〈感動があれば、それを記録し表現するために注意深く撮影する。そしてまた感動を表現するために被写体を注意してみれば、それによって対象がよりいっそうよく見えてくる〉。
ここに一挙に公開された263枚の写真は、その感動を生まに伝える。ジャコメッティとともに過ごしたすばらしい日々! これらの写真、いつ見てもあきることはない。

目次

I
ジャコメッティとの日々 1955-1961

II
1956年
1957年
1959年
1960年
1961年

解説(武田昭彦)