みすず書房

「その日暮らし」とは、ハンド・トゥ・マウスの意味ではない…むしろ、未来のために現在を犠牲にしない生活をさす。〈始終何物かに策うたれ驅られて〉(森鴎外「妄想」)生きるのは嫌だ。ローンのために働いたり、備蓄のために物を買い占めたり、〈いい学校〉へと子どもの尻を叩くのは嫌だ。その日食べるだけのものを買い、友だちから借りもして簡潔に暮らしたい。長くて百年のはかないいのちだからこそ。(「あとがき」より)

コンビニについて、ゴミ問題について、コーポラティブ・ハウスについて。そして須賀敦子について。旅の話も多い。インド、韓国、イタリア、モンゴル、チェコ…外から自分をみつめ、人と出会い、自分の住んでいる町を自分たちの住みたい環境にしてゆくために。ムダを作らない、日々の生活をするために。鍵一つかければどこへでも行けるのだから。

目次

コンビニ通い
二十年ぶりのプール
分ければ有機野菜
家族というチェイスドラマ
トイレの時間
ピタマハの夜
誤植さがしの昼下り
アジア・マッサージ紀行
デパートの落日
笑顔の記憶
尾道の一円ポッポ
香草のある夏休み
家は狭いけど心は広かった
あたかも壁がないように
時の物置
家を壊すとき
父の回復
羽二重団子が食べたいな
サン・シーロ・スタジアム
ゴミの駅
ドアは地獄の釜の蓋
ゲルの暮らし——モンゴル紀行
町の草木を食べる
チェコの一皿
あとがき