みすず書房

詩人たちの世紀

大人の本棚

西脇順三郎とエズラ・パウンド

判型 四六判
頁数 312頁
定価 2,640円 (本体:2,400円)
ISBN 978-4-622-04840-4
Cコード C1392
発行日 2003年5月22日
備考 現在品切
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詩人たちの世紀

「20世紀はパウンドの世紀である」と、アメリカの文学評論家ヒュー・ケナーはかつて喝破した。エリオットもジョイスもパウンドの強力な推輓によって世に出たことを思えば、これは十分に首肯できる見方である。そのパウンドが西脇の詩を読んで感嘆し、すぐさま彼をノーベル賞に推薦したのはかなり有名なエピソードである。東西のモダニズムの巨人がめでたく交差した瞬間である。

本書は、歴史と空間を自在に往来しながら、二人の生涯と詩的発展を詳細に、堅苦しくなく逸話も満載して語った、ユニークな評伝である。孔子を核に東西文化の融和を志向したパウンドに、老荘に惹かれた西脇。これはまた、一種の壮大な現代詩入門でもある。

「今はしかし/唐の詩人のように城外に出て……はてしない存在/を淋しく思うだけだ」(「自伝」)

目次

はしがき

第一部 変革の詩学 1908-1933
プロローグ 近代詩と渡欧者たち
  鴎外、荷風、パウンド、エリオット
西脇の留学まで
  空地の記憶/『文学における象徴主義の運動』
パウンドとロンドン詩壇
  イマジズム運動/「ギリシア的抒情詩」への影響/『荒地』合作
西脇のロンドン滞在
  郡虎彦のこと/ジョン・コリア/英文詩集『スペクトラム』/パリー詩壇
馥郁タル火夫ヨ
  『アムバルワリア』の成立/ウィリアム・プルーマー

第二部 近代の超克 1934-1945
パウンド 古典と近代
  隠喩としてのムッソリーニ/『キャントーズ』または『文化の案内』
近代の超克論争と日本回帰
  萩原朔太郎と「日本浪曼派」
『古代文学序説』から『旅人かへらず』へ
  折口の「まれびと」と西脇の「幻影の人」/三好達治の自然詩
パウンドの『ピサン・キャントーズ』
  エリオットへのメッセージ/エリオットの返答

第三部 東洋と西洋の融合 1946-1982
戦後詩のトポス
  「荒地」派と西脇/『荒地』の翻訳
「見立て」の手法
  寓話と神話
パウンドの西脇発見
  「より巧みなる者へ」/イタリアの休日
失われた時
  エリオット追悼/ジョン・コリアのその後/晩年のマージョリ/イギリス再訪
折衷主義の詩法
  老荘の世界/フェノロサと能/孔子の宗教/西脇の「遠いものの連結」/エピローグ  現代詩は古典たりうるか

第四部 パウンドの世紀 詩と反響
  ブロツキーの訪問記/ウィリアムズ 影響と対抗/オルソンと詩法の継承/スナイダー 漢詩の世界/バンティングと客観主義詩

第五部 ユリシーズ、私の「ユリシーズ」?——『キャントーズ』への案内
  冥府への下降 / 帰還/食蓮人 / 対位法/愛の秘儀 / エレウシス/利子 / キルケーの毒/ノーマン / 無意識への下降

付録 小アンソロジー
  パウンド『大祓』『ヒュー・セルウィン・モーバリ』抄
  西脇『アムバルワリア』『旅人かへらず』『近代の寓話』『第三の神話』抄

関連年譜
あとがき