文学シリーズ lettres
消去 下
AUSLOESCHUNG
- 著者
- トーマス・ベルンハルト
- 訳者
- 池田信雄
〈死神の鈎爪にがっしりつかまれているのが分かる。死神は私が何をしていても、片時もそばを離れない〉
ベルンハルトが本書のモットーに掲げたモンテーニュの言葉である。彼のどの作品においても死と自殺のテーマがライトモティーフのように、繰り返される。ベルンハルトの世界は死に浸潤されている。希望や愛など肯定的価値を帯びたいっさいのものが生息する可能性を奪われた作品世界は、極小にまで切り縮められている。当然、狭く息苦しい。しかし、ベルンハルトの小説が徹頭徹尾暗く重苦しいかというと、そうではない。ここにベルンハルトの文学の奇跡がある。そこにはまるで別世界からさしてくるような透明な光が満ち、妙なる音が響いているのだ。世界を呪詛し自己を否定する独白は通奏低音のように暗く強いうなりを発しつづけるが、耳を澄ますと、その上に幾層にも積み重なった倍音が響いているのが聞こえる。その響きの中に、あるべき世界のイメージが浮かび上がるのだ。(「訳者後書」より)
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「消去 下」の書籍情報:
- 四六判 タテ188mm×ヨコ128mm/272頁
- 定価 3,150円(本体3,000円)
- ISBN 4-622-04870-1 C0097
- 2004年2月5日発行






