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やきもち焼きの土器つくり

LA POTIERE JALOUSE


南アメリカのヒバロ族の神話に、人間が太陽と月になる話がある。ここを“ふりだし”に、ある謎なぞを解いていく――ヨタカと土器つくりと、夫婦間の嫉妬のあいだにはどんな関係があるのか?

本書の主題は、料理の火が存在すればそれに必ずともなう土器つくりの火と、焼成される土器の起源である。この主題が三つの方向から探究される。第一に、南北アメリカの遥かに隔たった地の諸神話に見られる構造的・内容的類同性、第二にインディアン神話に見られる動物群の神話的意味、そして第三に象徴的思考をめぐる神話の構造分析とフロイトの精神分析の視点の違いである。こうして判じもののような神話群の細部に、新しい光があてられると、突然パズルが解けるように、ヨタカやナマケモノや土器つくりの女たちが、天・地・地下世界をつつみこんだ広大な宇宙のなかで、それぞれの位置を占めはじめる。

レヴィ=ストロースは、この野心的な「小品」を、大著『神話論理』に対して、グランド・オペラにおけるバレーに比している。自然から文化への移行の秘密を探り、読者の知的愉しみを満喫させる一冊。


「やきもち焼きの土器つくり」の著訳者:

クロード・レヴィ=ストロース
Claude Levi-Strauss
1908年ベルギーに生まれる。パリ大学卒業。1931年哲学教授資格を得る。1935-38年、新設のサン・パウロ大学社会学教授として赴任、人類学の研究をはじめる。1941年からニューヨークのニュー・スクール・フォー・ソーシャル・リサーチで文化人類学の研究に従事。1959年コレージュ・ド・フランスの正教授となり、社会人類学の講座を創設する。1982年退官。アカデミー・フランセーズ会員。著書『親族の基本構造』(番町書房1977-78、青弓社2000)『人種と歴史』(みすず書房1970)『悲しき熱帯』(中央公論社1977)『構造人類学』(みすず書房1972)『今日のトーテミスム』(みすず書房1970)『野生の思考』(みすず書房1976)『生のものと火を通したもの〈神話論理I〉』(みすず書房2006)『蜜から灰へ〈神話論理II〉』(みすず書房2007)『食卓作法の起源〈神話論理III〉』(みすず書房2007)『裸の人1〈神話論理IV-1〉』(みすず書房2008)『仮面の道』(新潮社1977)『神話と意味』(みすず書房1996)『構造・神話・労働』(みすず書房1979)『はるかなる視線』(全2冊、みすず書房1986、1988)『遠近の回想』(共著、みすず書房1991)『レヴィ=ストロース講義――現代世界と人類学』(平凡社ライブラリー2005)『みる きく よむ』(みすず書房2005)『ブラジルへの郷愁』(みすず書房1995)他。
※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
渡辺公三
わたなべ・こうぞう
1949年、東京に生まれる。東京大学大学院博士課程修了。国立音楽大学助教授を経て、現在、立命館大学大学院教授。専攻、文化人類学、人類学史、アフリカ民族学。著書『司法的同一性の誕生』(言叢社2003)『レヴィ=ストロース――構造』(講談社1996、2003)『世紀転換期の国際秩序と国民文化の形成』(共編著、柏書房1999)ほか。訳書 デュモン『社会人類学の二つの理論』(弘文堂1977)デュモン『個人主義論考』(共訳、言叢社1993)デュモン『ホモ・ヒエラルキクス』(共訳、みすず書房2001)レヴィ=ストロース『食卓作法の起源〈神話論理III〉』(みすず書房2007)ほか。
※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。

目次


職人仕事のあり方と結びついた性格の特徴/ヨーロッパの例/職業文化のないところでは、このような結びつきは異なった規準にしたがう/ヨーロッパの俗信には土器作りがとりあげられていない/本書はそれをどう補い、説明しようとするか/とりあげる問題の列挙
第1章
ヒバロ族の神話とその異伝/《形の定まらぬもの》の理論/女と土器作り/本書の第一の主題の提示
第2章
「嫉妬深い技」としての土器作り/その神話的起源/南北アメリカにおける粘土の主/ヒダッツァ族のやきもち焼きの土器つくりの女/土器作りをめぐる宇宙的戦い
第3章
南アメリカにおける死の鳥、ヨタカの神話/ヨタカの神話と天体の争いの神話圏とのつながり/その三つの主題、すなわち食い意地、夫婦の不和と嫉妬、はじけること
第4章
土器作りの竈と料理の火/ヨタカと土器作り、カマドドリの理論/チャコその他の地域の神話/基本定式の適用
第5章
北アメリカにおけるヨタカの神話/南アメリカで見出された三つの主題がふたたび見出される/《動く岩》の物語に見られる《はじけるもの》の主題、その物語は夫婦の不和と嫉妬につながる
第6章
口唇による欲望と肛門による保持、ヨタカとナマケモノの対決/ヒバロ族の起源神話へ、宇宙的戦いと人間の戦争/年老いた敵としてのナマケモノ/南アメリカの諸神話におけるナマケモノの位置と役割
第7章
宇宙論的象徴としてのナマケモノ/ナマケモノの糞/インディアンの知恵とナチュラリストの知識/ナマケモノとヨタカの新しい相関と対立関係/土器作りと機織
第8章
動物素を求めて/ナマケモノの変換項としてのアリクイ/口なしあるいは肛門なしの赤い小人/リス、キンカジュー、コエンドゥー、サリーグ/樹上性動物群の理論
第9章
世界の階梯と近所迷惑の問題/肛門による漏出の象徴としてのホエザル/基本定式の二回目の適用
第10章
糞、流星、嫉妬、分断された身体、そのセットが北アメリカにも見出されること/イロクォイ族の起源神話/イロクォイ族における夢判断の役割/カリフォルニア南部の神話への序論
第11章
やきもち焼きの土器作りとしてのカリフォルニアの造物主あるいは文化英雄/アンデス山麓部の神話との対照/月と流星神話分析における記号の恣意性/カリフォルニア南部の神話と南アメリカのナマケモノ神話の関係/これらの神話の提起する問題/基本定式の三回目の適用
第12章
クラインの壺型の神話/吹き矢、パイプその他のチューブ/精神分析的解釈とその検討/身体の穴の意味場/肛門による欲望、口唇による漏出と保持/バクの理論/基本定式の四回め、五回めの適用
第13章
神話的思考の性質、すなわち複数のコード/心理=身体的コードの位置/口唇性と肛門性/食物摂取のサイクルと器の技術的サイクル/器と内容物との弁証法/土器作りの家族の保守性と嫉妬/女性と土器の外婚制/膣によって保持する女/太平洋北岸から吹き矢およびアマゾニアへの帰還
第14章
ヒバロ版『トーテムとタブー』/精神分析的解釈の原理の批判/象徴の二つの見方/フロイトとユング/神話的思考そのものとしてのフロイトの思想/精神分析と人間諸科学関係についてのフロイトの考え方/隠喩の性質/性的欲動か論理的要請か/コードの相互的相対性、日本語の書記体系の例/ソフォクレスとラビッシュ、比較分析の素描/「意味する」とはどういうことか
付録 神話集(『神話論理』より)
訳者あとがき
文献目録
出典参照ページ一覧

書評情報

青木保(文化人類学)
<2009年12月20日(日):毎日新聞>

この本の関連書


「やきもち焼きの土器つくり」の画像:

やきもち焼きの土器つくり

「やきもち焼きの土器つくり」の書籍情報:

四六判 タテ188mm×ヨコ128mm/370頁
定価 3,990円(本体3,800円)
ISBN 4-622-04904-X C1010
1997年6月6日発行

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