みすず書房

近代文化史 2【オンデマンド版】

ヨーロッパ精神の危機/黒死病から第一次世界大戦まで

KULTURGESCHICHTE DER NEUZEIT

判型 A5判
定価 9,900円 (本体:9,000円)
ISBN 978-4-622-06228-8
Cコード C1020
発行日 2011年5月19日
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近代文化史 2【オンデマンド版】

「芸術家の幻想や哲学者の思索から社交生活の日常的形式に至るまで、およそすべての文化の産物は逆説的なのだ。いいかえれば、《非実用的》なのだ。余計なもの無用なもの、反自然的で反論理的なもののいっさいが締め出されてしまった生活秩序がもしあるとすれば、それはもはや文化ではなくて、《純粋な文明》というものだろう」(フリーデル)

本書はフリーデルの大著『近代文化史』(全3巻)の第2巻にあたり、30年戦争から7年戦争を経てウィーン会議に至る、パロックとロココ、啓蒙と革命の時代を子細に辿っている。洗練された様式と堕落した趣味、理性の輝かしい勝利とギロチン、フリーデルは西欧近代史のクライマックスを彩る光と影、正と負の両面を、またしても軽妙なタッチでみごとに描き切る。スピノザやカント、ロックやヒューム、ゲーテと、シラー、さらにデカルトとパスカルなど、多彩な人物が繰り広げる近代のドラマはいよいよ佳境に入る。バロックの新解釈、ヴィンケルマンのギリシア紹介の過誤、ヴォルテールの寛容とルソーの狷介、またナポレオン失脚の原因など、読者はフリーデルの見解に眼から鱗の落ちる思いを随処でいだくことになろう。

「すてきな本だ……まったく、一貫性をもって、流麗に、読者の興味をつかんで離さない筆致で大きな題材を描いてみせる。近代の人間像と世界像の生成と、それが再び疑いの対象となるに至る歴史である。気高いヒューマニズムが生んだ書物である。幅広い基盤の上に建てられた、徹底して個性的な、思いのままに成長した歴史哲学である」(ヘルマン・ヘッセ)

[1987年11月30日初版発行]

目次

第二部 バロックとロココ 三十年戦争から七年戦争まで
第1章 バロックの序曲
失われた意味/雑草/「英雄」たち/ヴァレンシュタイン/グスタフ・アドルフ/大げさな評価/経済の混乱/「制度と化したアナーキー」/中世の終末/バロック前期/国家理性/ゲルマン文化とロマン文化/「当世風の人」/ゼッキンゲンのラッパ手/タバコとジャガイモ/詩学/コメニウス/自然科学/オランダの優勢/オランダ絵巻/日常生活の神話/レンブラント/ルーベンス/チャールズ王/クロムウェル/清教徒/クエーカー教徒/ミルトン/ホッブズ/スピノザ/『エティカ』/二つのゼロから成る方程式/目的のない世界/理性狂いの論理/真空の体系/人工的な非合理主義/世界劇場/高揚、誇張、謎かけ、潜在的なエロス/自然な不自然さ/歌劇の優位/黄金の時代/足をもたない王女たち/グラシャン/エル・グレコ/合理主義を癒す三つの治療法/虚構としての世界/パスカルの生涯の伝説/パスカルの魂の解剖/克服する人/真の太陽王

第2章 偉大な世紀
リシュリュー/オテル・ランブイエ/マザラン/デカルト主義の時代/魔術的な座標軸/演繹的人間/理性の太陽/兄弟をもたない魂/バロック前期からバロック盛期へ/地上の座標軸の中心点としての国王/ルイ十四世の国内統治/ヴェルサイユの劇場/ルイ十四世の外交/コルベール主義/演劇の結晶学/時代精神に仕える宮廷道化師/絵画と装飾/リュリ/ラ・ロシュフコー/鬘(かつら)/コーヒー/郵便馬車/新聞/ベール/顕微鏡/ニュートン/チャールズ二世/「名誉革命」/ロンドン/ロック/トマジウス/大選帝侯/オイゲン公/スウェーデンのクリスティナ/ピョートル大帝/ロシア的精神病/デカルト的およびベルニーニ的バロック/虚構の世界/理想とされた肥満体/疎外された個人/プラトン的理念としてのマリオネット/無限小の人間/ライプニッツ/時計としての世界/仮装行列

第3章 断末魔のバロック
ワトー/ラ・プチト・メゾン(小邸宅)/パステル画と陶磁器/中国の小物/小物の世紀/エスプリ/恋愛芝居と化した恋愛/チチスベオ(婦人に従う男)/性愛のデカダンス/わざと醜く見せる化粧術/ロココの悲劇的仮面/鏡ブーム/劇場主義/摂政時代/ローの挫折/ルイ十五世/法服の気品/諸大国の協奏曲/分裂小国の絶対主義/プライス河畔のアテナイ/クロップシュトック/クリスティアン・ヴォルフ/敬虔主義/ベル・カント(美しい歌)/バッハ、ヘンデル、フリードリヒ大王/国王/父親/反君主制論者/哲人/天才/好奇心から生まれた英雄/悲劇的な皮肉家/政治家/為政者/戦略家/燃素、過敏性、原始霧/倫理にそむく植物/自然をたっとぶ感覚の目ざめ/聖書と元帳/生活の安楽度/フランクリンとロビンソン/家族小説と催涙喜劇/週刊誌/ホガース/不機嫌な詩人たち/自由思想家/ヒューム/バークリー/モンテスキューとヴォーヴナルグ/十八世紀の総代/生の殉教者/ヴォルテールの性格/ヴォルテールの著作/作家としてのヴォルテール/歴史家としてのヴォルテール/哲学者としてのヴォルテール/庭園

第三部 啓蒙と革命 七年戦争からウィーン会議まで
第1章 健全な良識と自然への帰還
文化と地層の時代区分/三種の団塊のイメージ/最初の世界戦争/七年戦争三つの危機/フリ−ドリヒの大国/言葉ばかりの人類愛/ビュロー・デスプリ/百科全書/ディドロ/唯物論者たち/後生説と水成説/新しい化学/ガルヴァーニの電気/天文学と数字/植物授精と種痘/原植物/ニコライ/メンデルスゾーン/実用的な聖書解釈/キリスト復活のまやかし/レッシング/リヒテンベルク/光を拡散する男/イエズス会の破局/照明派の人々/クニッゲ/カザノヴァとカリョストロ/スウェーデンボリ/プロイセンの「成熟に至る前の腐敗」/民衆の皇帝/ヨーゼフの強制的啓蒙主義/行動を伴わない願望の政治/上からの、名ばかりの革命/ポーランドの末期/コスモポリタニズム(世界主義)/教育熱/重農主義者/機械人間のコンセプト/『悪口学校』/北アメリカの離反/ボーマルシェとシャンフォール/ルソーの自然観/エロイーズ、社会契約論、エミール/ルソーの性格/世界文学になぐりこみをかける平民/ルソー主義/感傷の勝利/シルエットとサークル文通/燕尾服/オシアン/シュトゥルム・ウント・ドラング/二次元の文学/ハーマン/ヘルダーとヤコービ/「とても変わった人」/ゲーテの時代/若き日のシラー/虚辞詩人/教育家としてのシラー/グルックとハイドン/モーツァルトの人生方程式/二つのカント像/「万物破壊者」と「万物偽装者」/理性の批判/純粋理性/いかにして自然は可能なりや?/いかにして形而上学は可能なりや?/人間理性の最低の敗北と最高の勝利/実践理性の優位/カント哲学の全体的結果/カント哲学の批判/ありえない物それ自体

第2章 作り出された古代ギリシア
急行馬車に乗った紳士/天才的な民族/アウグストゥス時代、カロリング朝、オットー朝のルネサンス/近代のルネサンスのいろいろ/誤った教材/「古代主義的」ギリシア人/「ロマン主義的」ギリシア人/ソクラテス主義/石膏のギリシア人/ギリシア彫刻/ギリシア絵画/アレクサンドリア文化/職業人と世界市民的臣民の台頭/ヘレニズムの大都市文化/ヘレニズムの芸術至上主義と専門学問/ヘレニズム時代のニヒリズム/ギリシアの音楽性/ギリシア語/ギリシア的な性愛/ギリシア的非道徳性/国家の道化たち/ギリシアの宗教心/ギリシアの厭世主義/ギリシア的理想主義/中間の民/最後の人文主義者/同性愛の美学/メングス/グレコマニー(ギリシア熱)/「リアン(何も無し)」

第3章 アンピール(帝政時代)
フィナーレ/革命/極端をもつ国家/エネルギー発現の図式/民主主義と自由/幻燈/悲劇的喜歌劇/フランス革命の歴史/ミラボー/地下室のネズミ、高尚な山賊、学校教師/理性と道徳の支配/アシニャ紙幣/タイム・トラヴェル/革命の軌跡/「ムッシュ・ジレール」/眠れるドイツ/古典主義者は実在したか?/二つの石膏製の頭像/パノラミック・アビリティ/演劇の支配者/腐れリンゴの情念/通俗文学の天才/ディオスクロイの息子たちの結託/二つの極/静の人、動の人/自然と歴史/口述する人、筆記する人/ロマン派の心理/ロマン的アイロニー/「二重恋愛」/非ロマン的なロマン主義/ノヴァーリス/シュライアーマハー/フィヒテ/シェリング/自然科学の発達/古典的衣裳/アルフィエーリ、ダヴィッド、タルマ、トルヴァルセン/ゴヤ/ベートーヴェン/マルサス主義/大陸封鎖/ナポレオンのドラマ/ナポレオンと運命/ナポレオンと戦略/現実主義者/ヨーロッパを演出した男/反イデオロギー的イデオローグ

年表
訳者あとがき
人名索引