みすず書房

本書は1906年、北一輝23歳のとき自費出版された。「一千頁の大著人をして歓喜せしむ」と論壇は沸いた。河上肇、片山潜、福田徳三、木下尚江は讃嘆し、板垣退助は「この書の発刊二十年おそかりし」を嘆じたという。
しかし本書で論ぜられた国体論、歴史観、経済論、社会主義論などは、明治政府を震駭させ、なかんずく東京日日新聞は「我立国の基礎に関し特に教育上の本義に重大なり」と論難したため、「朝憲紊乱」の名目でついに発禁処分を受けた。初版500部は、警視庁により直ちに押収された。
それ以来、本書は日本思想史上において、「謎に包まれた古典」として伝説的な存在を保っていた。著者は後年、中国革命に参加し、二・二六事件で処刑されるという数奇な運命を辿るにいたる。
本書はこの名前のみ知られるに過ぎなかった伝説の書を、その完全な形態において公刊したものである。

目次

凡例

緒言
第一編 社会主義の経済的正義
第二編 社会主義の倫理的理想
第三編 生物進化論と社会哲学
第四編 所謂国体論の復古的革命主義
第五編 社会主義の啓蒙運動

解説(神島二郎)

〔本書はすべて旧字で表記されています〕