みすず書房

晴れた日は仕事の手を止めて散歩がしたくなる。
根津神社で鳩を眺めて昼寝とか。
谷中墓地の奥の方で石碑を読むとか。
小石川植物園でスケッチするとか。
いつも小さな原稿用紙の枡目を手で埋めているので、目は大きな風景を恋しがる。とりわけせいせいする、のびのびするのは坂の上だ。(「富士山、なくなる?」)

長年かかわってきた建築保存のこと、NPO問題、沖縄愛楽園の訪問、はじめてのニューヨーク行きとその後に起こった〈9・11〉、それ以前に知り合った中村哲医師のこと、そして教育・政治・鴎外や荷風について…

たくさんのことが起こったかのように見える21世紀のはじめ、足を地につけ、もっとゆっくり考え、暮らしたい。『寺暮らし』『その日暮らし』につづく森まゆみの第三エッセイ集。

目次

人の距離
沖縄の宿
北信南越雪譜
巨人・大鵬・卵焼
ふしぎな先生たち
ピアノとパソコン
何一つ良くは見ざりき
“サミットの沖縄”だより
富士山、なくなる?
何を建てても勝手なの?
ダヤック族のロングハウス
めんどくさがり
ムギワラ町長——森健次郎のこと
旧東方文化学院のこと
東京の地下鉄
はじめてのニューヨーク
NPOの自己評価 沖縄愛楽園をたずねて
京都岩倉論楽社にて
記憶の継承
百姓哲学者 佐藤忠吉
たまり場の必要
大塚女子アパート
三ノ輪浄閑寺にて
音を探す旅
あとがき