みすず書房

リヒトホーフェン姉妹

思想史のなかの女性 1870-1970

THE VON RICHTHOFEN SISITERS

判型 A5判
頁数 600頁
定価 9,900円 (本体:9,000円)
ISBN 978-4-622-07008-5
Cコード C3010
発行日 2003年2月20日
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リヒトホーフェン姉妹

1870年の戦争でプロイセン将校だったフリードリヒ・フォン・リヒトホーフェンには二人の娘があった。姉は高い学歴と自立をかちとり、大学での研究や社会科学を修め、理性的な議論と政治的改革の道を進んだ。妹は愛と自然を信じ、自分の内側からあふれでる女性的な本能と無意識な無邪気さのもつ生命の再生力を信奉した。彼女は若くして結婚したが、相手はずっと年上で異質な人間で、その結婚は彼女にとって幸せなものではなかった。姉は同じ知的関心をもち合わせた男と結婚したが、これまた不幸な結婚であった。彼女は当時のドイツ文化の中心であったハイデルベルクの指導的サークルと交わり、そして偉大な社会学者マックス・ヴェーバーと、その弟子として、友人として、愛人としての交わりをもった。その名はエルゼ・ヤッフェ。エルゼは20世紀の批判的知識人のミューズとなった。妹は夫と子供を捨てて年下の男と駆け落ちをした。その男は彼女に導かれて偉大なロマン主義の小説家となり、世界的名声を得た。彼女の名はフリーダ・ロレンス。フリーダはわれわれのエロス的想像力のミューズとなった。

本書は二人の姉妹を主人公に、父権制と母権制の変奏を地にして、オットー・グロス、マックス・ヴェーバー、D・H・ロレンスはじめ、1870年から100年間にわたって、数多くの人物と土地と思想・文学・芸術の影響関係をつぶさに追跡した思想史=物語である。