みすず書房

今日の日本を代表する現代詩作家の最新エッセイ74編。

「五〇歳を過ぎた。するべきことはした。あとはできることをしたい。それも、またぼくはこうするなと、あらかじめわかるものがいい。こんなふうな習慣がひとつあって、光っていれば、急に変なものがやってこない感じがするのだ。」

生きていること、ことばの変化と伝統、そして詩や文学や読書の事態について、もっとも敏感にして柔軟な批評精神は、いまという時代をどう見ているのか。

「ひとつの方向に時代が流れ、もうどうにもそれにさからえなくなったとき、日常のひとつひとつの行為や思いは、どのようなものとして人の気持ちのなかにおさまるのだろうか。」

「ものごとがゆきづまる。見えなくなる。あるいは人間のための空気がうすまる。そんなときにすきまを見つけて、ふらりと入り、ことばを置いて消えるような。」

知識でも情報でもない、読書のよろこびが、この本にはたしかにある。