若きパルク／魅惑【改訂普及版】

1871年10月30日、南仏の港町セット市に生まれる。誕生後最初の言葉はClef（鍵）であった。町の小さな学校（コレージュ・ドゥ・セット、現在リセ・ポール・ヴァレリー）から近くの大都市モンペリエのリセを経て、モンペリエ大学法学部卒業。少年時代、海軍士官を志し、数学ができず断念。13歳より詩を書き始め、16歳でボードレール、17歳でマラルメ、ワーグナーを発見。19歳、ピエール・ルイスと出会ひ、ルイスにジッドを紹介される。マラルメに手紙を出し返書を貰ふ。20歳、詩作盛ん。詩誌『コンク（法螺貝）』同人。10歳年長の既婚女性に片思ひ。秋、家族の反対にもかかはらず就職の目途なしにパリに出て、マラルメの火曜会の常連となる。1892年、21歳、秋、10月「ジェノアの危機」を経て「獣性」訣別と詩作断念を決意。1894年渡英、各地サロンに招かれる。1895年、24歳、「レオナルド・ダ・ヴィンチ方法序説」雑誌掲載、1896年、3月、チャータード・カンパニーに高給で招かれ渡英、4月ロンドンにおいて自殺未遂。「テスト氏との一夜」雑誌掲載。1897年、26歳、陸軍省文官となる。1898年、師マラルメの死に会ふ。1900年、29歳で画家ベルト・モリゾーの姪ジャニー・ゴビヤールと結婚。アヴァス通信社社長の個人秘書となる。1901年、陸軍省を辞職。私的秘書としてひっそりと暮らし、探究をもっぱらとする（「大沈黙」）。2男1女。妻は病身。1913年、42歳、終生の親友ジッドの勧めで詩に還り、『若きパルク』執筆開始。1917年4月、45歳、『若きパルク』刊行。一躍著名、サロンにおける弁舌の雄となる。20年、49歳、カトリーヌ・ポッジとの恋愛始まる。21年、対話篇「エウパリノス」、「魂と舞踊」。22年、失職。生計に悩み、主に欧州各地の講演で生活。詩集『魅惑』初版。24年、52歳、評論集『ヴァリエテ』、以後1944年の『ヴァリエテV』まで順次刊行。25年、アカデミー・フランセーズ会員となる。南部フランス人としては20世紀最初といふ。次第に第三共和国の半公式知的代表者となる。32年、対話篇『固定観念』、33年、『ドガ・ダンス・デッサン』、ニースの地中海中央研究所所長となる。36年、65歳、コレージュ・ドゥ・フランス詩学教授となる。41年、ドイツ占領下、多くパリに残留、ベルグソンの追悼演説を行ふ。地中海中央研究所所長解任。1944年、『わがファウスト』、パリ解放後、ドゴールの知遇を得る。1945年7月20日、パリにおいて胃癌によって死去。ドゴールの命による国葬。ジッドの奔走により当年のノーベル賞有力候補だったが、死によって実現せずといふ。

1934年生まれ。59年、京都大学医学部卒業。はじめウイルス研究者。東大分院において精神科医となる。甲南大学文学部人間科学科教授。神戸大学名誉教授。85年、芸術療法学会賞、89年、読売文学賞（翻訳研究賞）、91年、ギリシャ国文学翻訳賞、96年、毎日出版文化賞。『現代ギリシャ詩選』『カヴァフィス全詩集』『リッツォス詩集「括弧」』、エッセイ集『記憶の肖像』『家族の深淵』『アリアドネからの糸』（以上みすず書房）、他。