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トラウマ・歴史・物語

持ち主なき出来事

UNCLAIMED EXPERIENCE


『トラウマへの探究――証言の可能性と不可能性』の編著者であり、心理学の概念である〈トラウマ〉を人文諸科学の世界に投げ入れ、思想的衝撃をもたらしたアメリカの気鋭の研究者キャシー・カルースの主著の邦訳が、ようやく成った。

『快感原則の彼岸』や『モーセと一神教』に述べられているフロイトのトラウマ理論、デュラスとレネの『ヒロシマ私の恋人』に描かれた個人の破滅の中の相互作用の物語、ド=マン、クライスト、カントのテクストにおける指示機能への考察と落下する身体の形象、そしてフロイトのテクストを分析する中でラカンが行なったトラウマに対する再考。著者はこれらの厳密な分析をとおして、遅延した体験としてのトラウマの物語と歴史の関係や、その語りの二重性、さらに他者の傷から発せられた声や言葉に耳を傾けること、その応答責任の重要性を、情熱的かつ冷静に描出してゆく。ポール・ド=マンの弟子でもある著者の筆さばきは、じつに鮮やかだ。

心理学・精神医学から文学・歴史・現代思想まで、既成のジャンルを横断して提示される、刺激的論考である。


「トラウマ・歴史・物語」の著訳者:

キャシー・カルース
Cathy Caruth
エモリー大学英文科・比較文学科教授および比較文学科主任。プリンストン大学卒業後、イェール大学比較文学科でポール・ド=マンの最後の学生の一人として学んだ後、同大学英文科助教授をへて、現職。専攻は英文学・批評理論。1995年に刊行された編著Trauma: Explorations in Memory, the Johns Hopkins University Press(邦訳、キャシー・カルース編『トラウマへの探究――証言の不可能性と可能性』作品社、2000)は、「トラウマ」概念を中心に、精神分析・文学・歴史などの領域に新たな可能性を問うた書として絶賛された。著書はほかにEmpirical Truths and Critical Fictions: Locke, Wordsworth, Kant, Freud(1990)などがある。
※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
下河辺美知子
しもこうべ・みちこ
成蹊大学文学部教授。文学批評理論およびアメリカ文学・アメリカ文化。著書『歴史とトラウマ――記憶と忘却のメカニズム』(作品社、2000)『トラウマの表象と主体』(共著、新曜社、2003)ほか。編訳書に上記カルース編『トラウマへの探究』のほか、ショシャナ・フェルマン『女が書くとき女が読むとき――自伝的新フェミニズム批評』(勁草書房、1997)などがある。
※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。

目次

凡例
謝辞
序文――傷と声
二重の傷/事故の物語/トラウマと歴史/他者の声
第1章 持ち主なき経験――トラウマと歴史の可能性
(フロイト『モーセと一神教』)
エクソダス、または出立の歴史/列車の衝突、または事故としての歴史/災厄を書くこと/囚われから自由へ、またはフロイトのエクソダス
第2章 文学と記憶の上演
(デュラス、レネ『ヒロシマ私の恋人』)
見ることの裏切り/「私の言うことを聞いてください」/生と死の問題/歴史の始まり/交換の意味/他者の物語/見ている者と言語の問題/カフェ・カサブランカ、または映画的過去/エピローグ――映画製作、または声の翻訳不可能性
第3章 トラウマからの/への出立――フロイトにおける生きのびることの歴史
(『快感原則の彼岸』『モーセと一神教』)
生きのびることの歴史/失われた経験/目覚めというトラウマ/出立と歴史/歴史というトラウマ、またはユダヤ民族の歴史/未来の可能性
第4章 落下する身体と指示の衝撃
(ド=マン、カント、クライスト)
落下の世界/哲学の身体/優雅なる形象たち/実体のない現実/指示の衝撃
第5章 トラウマ的目覚め
(フロイト、ラカン、そして記憶のエシックス)
夢の物語/意識と睡眠/目覚めの物語/現実界との遭遇/生きのびることの本質/聞き届けられなかった呼びかけ/不可避の要請/「私も、また、見たのである」/精神分析の伝達
原註
訳者あとがき
索引

この本の関連書


「トラウマ・歴史・物語」の画像:

トラウマ・歴史・物語

「トラウマ・歴史・物語」の書籍情報:

四六判 タテ188mm×ヨコ128mm/232頁
定価 2,940円(本体2,800円)
ISBN 4-622-07109-6 C1010
2005年2月8日発行

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