みすず書房

はるかなる視線 2【新装版】

LE REGARD ELOIGNE

判型 四六判
頁数 280頁
定価 3,520円 (本体:3,200円)
ISBN 978-4-622-07192-1
Cコード C1010
発行日 2006年2月20日
備考 現在品切
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はるかなる視線 2【新装版】

見物席から見るところの我が風姿は、離見で見た自分である。そして、自己の眼で見るところの自己の姿は、それは我見であって、決して離見で見た自分ではない。離見の見方で見る時には、見物人と同じ心になって見るわけであって、かくする時には、自己の姿というものを完全に見極めることができる。——世阿弥『花鏡』より

「はるかなる視線」とは、この世阿弥の〈離見の見〉に触発されたタイトルである。文化人類学とは、観察者のネイティブな文化とは異なった文化の研究であるが、同時に、みずからの文化への反省である。レヴィ=ストロースにとっては、カルテジアン文化の深化の試みでもあるのだ。
著者は多様な題材をとおしてそれを提示してみせる。ワーグナーの「パルジファル」、マックス・エルンストの画法、アポリネールの詩「イヌサフラン」、現代の英才児教育、40年前のニューヨークの骨董屋歩き等々である。そしてそれらはすべて“一本の糸でつながっている”のである。
『神話論理』以後の新しい視座と可能性を示した本書は、たえず前進しつづける著者の学問への態度によって、われわれに新鮮な感銘をあたえる。

[初版1988年発行、新装版2006年発行]

目次

環境と表象
第9章 言語学の教訓
第10章 宗教・言語・歴史——フェルディナン・ド・ソシュールの未完原稿をめぐって
第11章 神話の可能性から社会的実存へ

信仰・神話・儀式
第12章 宇宙性(コスモポリタニズム)と分裂病
第13章 神話と失念
第14章 アメリカのピタゴラス
第15章 双生児出産の解剖学的予示
第16章 神話=文学のある小さな謎
第17章 クレティアン・ド・トロワからリヒアルト・ワーグナーへ・三部作についての覚書き

拘束と自由
第18章 ある瞑想的画法
第19章 ある若き画家へ
第20章 ニューヨーク・あと追いと予示の町
第21章 創造的児童あと追いの記
第22章 自由についての考察

訳者あとがき
索引・参考文献

「それは日本語から借りてきたタイトルなのです」(レヴィ=ストロース)

「それは日本語から借りてきたタイトルなのです。能の創始者である世阿弥を読んでいて思いついたのです。よい演技者であるためには、観客の目で自分自身を見ることができなければならない、と世阿弥は言っています。そこで彼は「遠いまなざし」〔世阿弥自身の言葉は「離見の見」〕という表現を使っているのです」
レヴィ=ストロース/エリボン『遠近の回想』竹内信夫訳、増補新版、323頁)