文学シリーズ lettres
秋の四重奏
QUARTET IN AUTUMN
ロンドン、全員ひとり暮らしの男女が四人。共に、同じ会社に勤め、定年間近の年齢である。まず女性二人が退職する。そのうち、マーシャがやがて亡くなり、レティは老後の生活になんとか順応しようと努める。男たち、エドウィンとノーマンはまだ勤めているが、まもなく会社を去ることになるだろう。こうした四人の平凡な日常風景――職場のやりとりや昼食、互いのささやかな思いやりやすれ違い、ヴァカンスやクリスマスの計画、遺産相続などが淡々と描かれるだけで、何であれ、劇的な事件には発展しない。マーシャの死さえも日常生活の中の一齣にすぎない。これら凡庸な四人のありふれた〈老い〉が、この味わい深い上質のユーモアに満ちた〈コメディ〉の核心をなしている。われわれはここで、静かに奏でられた、ふつうの現代人の、孤独な〈生と死〉の意味あるいは無意味に向き合うことになる。
温厚かつ辛辣な作風によって、〈現代のオースティン〉という声価を得た英国作家の代表作。
「秋の四重奏」の著訳者:
- バーバラ・ピム
- Barbara Pym
- 1913年に英国シュロプシャに生まれる。オクスフォード大学在学中に第一作を執筆(50年刊行)。海外での軍の仕事の後、母親の看護のため故郷に帰る。母の死後、ロンドンの国際アフリカ研究所に勤務しながら、小説を発表。61年までに6作を発表し、〈20世紀のオースティン〉という声価を得たが、以後文壇から姿を消す。しかし77年、TLSのアンケートで過小評価されたのをきっかけにカムバックを果たし、没後その文学的評価はいよいよ高い。
- ※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
- 小野寺健
- おのでら・たけし
- 1931年横浜に生まれる。1955年東京大学文学部英文科卒業。1957年同大学大学院修士課程修了。現在日本大学教授。文化学院講師。横浜市立大学名誉教授。英文学専攻。著書『イギリス的人生』(晶文社)『英国文壇史』(研究社出版)『英国的経験』(筑摩書房)。『心にのこる言葉1・2・3・4』(河出書房新社)『E.M.フォースターの姿勢』(みすず書房)。訳書 マーガレット・ドラブル『碾臼』(河出文庫)、ジョージ・オーウェル『オーウェル評論集』『パリ・ロンドン放浪記』『20世紀イギリス短篇選 上下』パール・バック『大地1・2・3・4』『フォースター評論集』(以上岩波文庫)、カズオ・イシグロ『遠い山なみの光』(ハヤカワ文庫)、ウィリアム・ポイド『アイスクリーム戦争』(早稲田出版)、アニータ・ブルックナー『秋のホテル』『結婚式の写真』『英国の友人』『異国の秋』『嘘』『招く女たち』『ある人生の門出』(以上晶文社)。E.M.フォースター『民主主義に万歳二唱』『アビンジャー・ハーヴェスト』〔共訳〕『インドヘの道』(以上みすず書房)など。
- ※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
この本の関連書
「秋の四重奏」の画像:
「秋の四重奏」の書籍情報:
- 四六判 タテ188mm×ヨコ128mm/248頁
- 定価 2,940円(本体2,800円)
- ISBN 4-622-07216-5 C0097
- 2006年5月23日発行