サリヴァンの精神科セミナー
A HARRY STACK SULLIVAN CASE SEMINAR
本書は、サリヴァンが講じたケース・セミナーの記録である。患者本人の治療とリアルタイムに連係して続いたため、類をみない実践的な症例研究となっている。
治療は患者についてわずかなデータしかない段階から始まる。そこから、まずは患者との間に治療的な関係が構築され、徐々に靄が晴れるように患者の苦しみの全貌が判然としてくる経過はスリリングである。この過程を通じてサリヴァンの、徹底して実証主義的なアプローチが示される。
また、言葉の受け取り方がくるくると変わる患者と話す際の注意、患者が深刻な告白をした際にしておくべき対応など、状況に応じてさりげなくも考え抜かれたコミュニケーションの技術や、それらを治療の流れの中でいかに活かすかについてのヒントが、本書の随所に光っている。
再読、再々読によってますますサリヴァンの細部にわたる着眼の的確さが見えてくる、深みのあるセミナーである。読者の理解を促すべく、訳者がポイントを頭注で示し、詳細な訳注を付し、さらに本書のアクチュアルな意義についてあとがきで解説している。DSMという規格化された体系内では得られない臨床的英知がここにある。
「サリヴァンの精神科セミナー」の著訳者:
- ハリー・スタック・サリヴァン
- Harry Stack Sullivan
- 1892年アメリカのニューヨーク州中央部に、アイルランド系移民の子として生れる。1917年シカゴ医学校を卒業、軍医を経て1923年頃から1930年にわたりシェパード・アンド・イノック・プラット病院に勤務。入院中の分裂病患者に対するインテンシヴな精神療法的接近を試みた。1930年代にはニューヨークで開業医として強迫神経症の治療にあたり、38年に発刊されたPsychiatry誌の主筆となる。社会科学との交流、政治精神医学という新しい領域への活動を行ったが、1949年国際会議に出席のためパリに滞在中客死した。著書は本書のほか『現代精神医学の概念』『精神医学の臨床研究』『分裂病は人間的過程である』『パーソナル・サイコパソロジー』『精神医学と社会科学の融合』『精神医学は対人関係論である』など。
- ※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
- ロバート・G・クヴァーニス
- Robert G. Kvarnes
- M.D.ワシントンで精神科・精神分析医として開業し、ワシントン精神医学校(Washington School of Psychiatry)校長を1952年から1982年まで務めた。
- ※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
- グロリア・H・パーロフ
- Gloria H. Parloff
- 『サイカイアトリー』誌(ハリー・スタック・サリヴァンが1938年に創刊した雑誌)の統括編集者を1967年から1991年まで務めた。
- ※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
- 中井久夫
- なかい・ひさお
- 1934年奈良県に生れる。京都大学医学部卒業。神戸大学名誉教授。精神科医。著書『中井久夫著作集--精神医学の経験』全6巻別巻2(岩崎学術出版社、1984-91)『分裂病と人類』(東京大学出版会)『記憶の肖像』(1992)『家族の深淵』(1995)『アリアドネからの糸』(1997)『最終講義--分裂病私見』(1988)『西欧精神医学背景史』(1999)『清陰星雨』(2002)『時のしずく』(2005)『関与と観察』(2005、以上みすず書房)ほか。共編著『1995年1月・神戸』(1995)『昨日のごとく』(1996、共にみすず書房)。訳書にエレンベルガー『無意識の発見』上下(共訳、弘文堂、1980)のほか、みすず書房からはサリヴァン『現代精神医学の概念』『精神医学の臨床研究』『精神医学的面接』『精神医学は対人関係論である』『分裂病は人間的過程である』、ハーマン『心的外傷と回復』、バリント『一次愛と精神分析技法』(共訳)、ヤング『PTSDの医療人類学』(共訳)、『エランベルジェ著作集』(全3巻)、パトナム『解難』、カーディナー『戦争ストレスと神経症』(共訳)、さらに『現代ギリシャ詩選』『カヴァフィス全詩集』『リッツォス詩集 括弧』、ヴァレリー『若きパルク/魅惑』などが刊行されている。
- ※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
目次
序文
謝辞
セミナー参加者
ケース・セミナー第1回 1946年1月
25年後の座談会 第1回へのコメント、1971年12月
ケース・セミナー第2回 1946年12月
25年後の座談会 第2回へのコメント、1972年1月
ケース・セミナー第3回 1947年1月
25年後の座談会 第3回へのコメント、1972年2月
ケース・セミナー第4回 1947年2月
25年後の座談会 第4回へのコメント、1972年2月
ケースセミナー第5回 1947年5月
25年後の座談会 第5回へのコメント、1972年2月
患者のその後
訳注
解題と訳者あとがき
この本の関連書
「サリヴァンの精神科セミナー」の画像:
「サリヴァンの精神科セミナー」の書籍情報:
- A5判 タテ210mm×ヨコ148mm/408頁
- 定価 5,460円(本体5,200円)
- ISBN 4-622-07217-3 C3047
- 2006年5月18日発行