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ヒトの変異

人体の遺伝的多様性について

MUTANTS


その昔、重い奇形をもつ人々は「怪物」とみなされた。いま、奇形は遺伝子の働きを知るうえで、貴重な手がかりとなっている。その間には体づくりの謎をめぐる、数百年にわたる混乱と探究の歴史があった。ヒトの変異の博物学・文化史・科学史は、不可分に縒り合わされている。

「私たちはみなミュータントなのだ。ただその程度が、人によって違うだけなのだ」。科学者は違いの原因となる遺伝子を探し、その文法を見出す。それが「私たちはなぜこのような形をしているのか」という問いへの答えにつながる。重い奇形の原因が、約30億の塩基対のうちのたった一つに起きた変異である場合もある。体づくりの精妙な仕組みに驚嘆し、多様性の謎が解けると同時に、違いの源がいかに私たちの直感に反して微かであるかを発見する。発生生物学者たちを虜にするそのスペクタクルを、本書は垣間見せてくれる。

人体の遺伝的多様性の原因を科学的に解明することは、不当な差別を助長するのではなく、無化するはずではないか? 著者が改めて提起するこの問いが、賛否に拠らず軽視できないものであることは、「怪物」から「遺伝子のわずかな変異」への旅を知った読者には明らかだろう。


「ヒトの変異」の著訳者:

アルマン・マリー・ルロワ
Armand Marie Leroi
1964年、ニュージーランド、ウェリントン生まれ。国籍はオランダのまま、ニュージーランド、南アフリカ、カナダで幼少年期を過ごす。ダルハウジー大学(ハリファックス、カナダ)を卒業後、カリフォルニア大学(アメリカ)で博士号を取得。マイケル・ローズ博士のもとでショウジョウバエの老化の研究に携わる。ついでアルバート・アインシュタイン医科大学のスコット・エモンズ博士のもとでポストドクトラル・フェローを勤め、線虫の成長の研究を始める。1996年からインペリアル・カレッジ・ロンドンで講師、2001年から同カレッジの進化発生生物学部門リーダーを務める。初の著書である本書により、Guardian First Book awardを受賞。
※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
上野直人
うえの・なおと
農学博士。現・自然科学研究機構基礎生物学研究所教授(発生生物学)、総合研究大学院大学生命科学研究科併任教授。専門は形態形成の分子機構に関する研究で、生物の「かたち」づくりを制御する仕組みの解明に取り組んでいる。著書に「新 形づくりの分子メカニズム」(羊土社、1999年)、訳書にショーン・B・キャロルら「DNAから解き明かされる形づくりと進化の不思議」(羊土社、2005年)(いずれも野地澄晴博士との共著・共訳)がある。
※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
築地誠子
つきじ・せいこ
翻訳家。東京外国語大学ロシア語科卒。訳書に、ジャイルズ・ミルトン『さむらいウィリアム』(原書房、2005)、スタッズ・ターケル『死について!』(共訳、原書房、2003)、リンダ・グレキン『方向オンチな女たち』(メディアファクトリー、2001)、スザンヌ・ステープルズ『シャバヌ~砂漠の風の娘』、『ハベリの窓辺にて』(共訳、ポプラ社、2004、2005)他。
※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。

目次

序章
第1章 ミュータント──はじめに
第2章 完全な結合──胚の体軸について
第3章 最後の審判──顔について
第4章 クリーピー・ベル──手足について
第5章 わたしの骨の骨,わたしの肉の肉──骨格について
第6章 ツルとの戦い──身長について
第7章 完全なものへの欲望と追求──性について
第8章 うたかた──皮膚について
第9章 節制生活──老化について
第10章 多様性──エピローグ

謝辞
監修者あとがき
訳者あとがき
注釈
参考文献
索引

編集者からひとこと

遺伝子による形づくりの制御のような、自然の営みの圧倒的な精妙さを知るとき、何か途方もない地形を見るときと同じように、驚き、感動、われわれの卑小さの実感、等々がこみ上げませんか。そんな知的カタルシスを味わいたい人はぜひ。 ...続きを読む »

書評情報

渡辺政隆(サイエンスライター)
<2006年8月20日:朝日新聞>
本書は、気鋭の進化発生生物学者が語る、ヒトの突然変異探求の歴史と最新研究の成果に関する読み応えのある科学書である。かなりショッキングな事例も紹介されているが、逆にそうした事実は、発生すなわち受精から誕生までの過程の精妙さ、すばらしさを教えてくれる。
 程度こそ違うが「私たちはみなミュータントなのだ」という著者の言葉はそうした最新の知見に支えられてこそ発することのできる、重みのあるメッセージである。
垂水雄二<2006年7月2日:日本経済新聞>
凡庸なタイトルが抱かせる予断は、ほんの数ページを読みすすむうちに、よい意味で裏切られる。ここには驚くほど豊かで、非凡な世界がある。……史料の渉猟ぶりはみごとで、歴史家の手になる一級品の読み物と言っても十分通用する。しかし現役の生物学者である著者のすごいところは、そこから、ポスト・ゲノム時代の発生遺伝学の成果までつなげていってしまう力量である。

関連リンク

この本の関連書


「ヒトの変異」の画像:

ヒトの変異

「ヒトの変異」の書籍情報:

四六判 タテ188mm×ヨコ128mm/384頁
定価 3,360円(本体3,200円)
ISBN 4-622-07219-X C0045
2006年6月9日発行

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