みすず書房

昭和19年10月に、著者は東京文理科大学英語学英文学科の学生になった。入学早々に主任教授福原麟太郎先生の個人インタヴューがあって、著者はこう質問する——「文学というのがよくわかりません。文学って何ですか」
この後、〈文学とは何か〉が著者の一貫したテーマとなる。それは作家や作品ではなく、〈読者〉が中心をなす研究であった。やがて著者は大学教師と並行して、英語・英文学雑誌の編集長となる。はじめは返品の山に頭をかかえるが、名企画を出して挽回。この辺の試行錯誤が『エディターシップ』にも繋がってゆく。他にも、留学を望まずや三人会の愉しみ、「英語青年」大学、書き下ろしの方法など、著者の知的創造の舞台裏と刺戟的な人生を知る上で恰好のエッセーを収める。本書は、反時代的な姿勢を貫きつつ、オリジナルな文学理論を構想して、中年をみごとに生きた〈研究者=モラリスト〉の自分史である。

目次

戦争と英語/逆風/留学を望まず/「文学って何ですか」/ゲーベンデ・リーベ/幻滅/三人会/雑誌編集/読者/「英語青年」大学/同人雑誌/エディターシップ/修辞的残像/読者論の視点/知的創造/虚言人/古典/ことわざ/文章/テーマ・ノート/書き下ろし/道徳塗説/解釈力/言葉、ことば/あとがき

書評情報

富士川義之(駒沢大教授)
西日本新聞2007年4月15日
河合祥一郎(東京大学助教授)
読売新聞2007年3月10日(日)
富士川義之(駒沢大学教授)
読売新聞2007年2月25日(日)
富士川義之(駒沢大学教授)
北海道新聞2007年3月11日