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症例 マドレーヌ

苦悶から恍惚へ

UN DELIRE RELIGIEUX CHEZ UNE EXTATIQUE


精神医学のパイオニアでありながらフロイトの陰に隠れ、近年再評価の進むジャネは、19世紀末に人間の無意識領域への探索を試み、精神療法の萌芽を見出した。『症例 マドレーヌ』は、治療的実践と精緻な観察が結実した第一級の症例研究である。
少女時代から強迫観念に悩むマドレーヌは、やがて貧しさへの憧憬から家を離れ、24年の間行方不明になり、42歳のとき家族に見出されてパリのサルペトリエール病院に入院し、ジャネに22年におよぶ治療をうけた。その数奇な生涯、つまさき立ち歩き、手足に現れるスティグマ、無動状態、苦悶と恍惚、そして晩年の治癒に至るまでのすべてがマドレーヌの手記とジャネの記述とによって濃密に綴られる。
「クスリ(抗精神病薬)のない時代にこれほどの精神療法を実践しそれなりの成果を得ている報告を目の当たりにするとき、私たちは、あらためて今日の「クスリ万能」ともいえる精神科医療のあり方を見直さざるをえない。」(訳者あとがき)
強迫観念、乖離、空虚感、離人体験などの様々な症状の内実が、病めるひとりの人物をとおして鮮やかに伝わる、完璧な症例研究である。


「症例 マドレーヌ」の著訳者:

ピエール・ジャネ
Pierre Janet
1859年パリに生まれる。フロイトとならぶ代表的心理学者。19世紀末サルペトリエール病院でヒステリー、解離の心理学的治療に携わり、外傷性記憶、意識下固着観念、意識野の狭窄、交代性人格、心理学的エネルギー、心的緊張、心的傾向(人格)の階層構造など重要な諸概念を提唱。後年は、ヒステリーから強迫観念、精神衰弱の病理学的考察に視点を移し、それらの論考をコレージュ・ド・フランスで「社会的人格の研究」と題して講じている。著書は『心理学的自動症』『神経症と固着観念』『心理学的医療』『心理学的医学』(松本雅彦訳、みすず書房、1981)『神経症』(高橋徹訳、医学書院、1974)『心理学的力とその減弱』『強迫観念と精神衰弱』『苦悶から恍惚へ』『人格の心理的発達』(関計夫訳、慶応通信、1955)『信仰の病理』など多数におよぶ。エレンベルガーによる「フロイトの陰に隠れてジャネは不当に忘却されている」というジャネ復権の提唱もあって、これらの著作は、1975年ピエール・ジャネ協会 Societe Pierre Janetから復刻され、さらに2005年には著書および講義録がHarmattan社から復刻されはじめている。
※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
松本雅彦
まつもと・まさひこ
1937年に生まれる。精神科医。1964年京都大学医学部卒業。阪本病院、京都大学精神科勤務を経て、京都大学医療技術短期大学部教授、京都府立洛南病院院長、京都光華女子大学教授を歴任。著書に『精神病理学とは何だろうか』(増補改訂版、星和書店、1996)『こころのありか――分裂病の精神病理』(日本評論社、1998)ほか。訳書にジャネ『心理学的医学』サールズ『逆転移1』(みすず書房、1991)ガンダーソン『境界パーソナリティ障害――その臨床と病理』(岩崎学術出版社、1988)チオンピ『感情論理』(学樹書院、1994)などがある。
※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。

目次

はじめに
第1章 生活史
第2章 慰安状態と恍惚
第3章 恍惚期、歓びの感情
第4章 基底にある病態
第5章 均衡状態、そして全体の経過
訳者あとがき
資料
索引

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「症例 マドレーヌ」の画像:

症例 マドレーヌ

「症例 マドレーヌ」の書籍情報:

四六判 タテ188mm×ヨコ128mm/312頁
定価 3,990円(本体3,800円)
ISBN 978-4-622-07297-3 C1011
2007年5月23日発行

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