みすず書房

症例 マドレーヌ

苦悶から恍惚へ

UN DELIRE RELIGIEUX CHEZ UNE EXTATIQUE

判型 四六判
頁数 314頁
定価 4,180円 (本体:3,800円)
ISBN 978-4-622-07297-3
Cコード C1011
発行日 2007年5月23日
オンラインで購入
症例 マドレーヌ

精神医学のパイオニアでありながらフロイトの陰に隠れ、近年再評価の進むジャネは、19世紀末に人間の無意識領域への探索を試み、精神療法の萌芽を見出した。『症例 マドレーヌ』は、治療的実践と精緻な観察が結実した第一級の症例研究である。
少女時代から強迫観念に悩むマドレーヌは、やがて貧しさへの憧憬から家を離れ、24年の間行方不明になり、42歳のとき家族に見出されてパリのサルペトリエール病院に入院し、ジャネに22年におよぶ治療をうけた。その数奇な生涯、つまさき立ち歩き、手足に現れるスティグマ、無動状態、苦悶と恍惚、そして晩年の治癒に至るまでのすべてがマドレーヌの手記とジャネの記述とによって濃密に綴られる。
「クスリ(抗精神病薬)のない時代にこれほどの精神療法を実践しそれなりの成果を得ている報告を目の当たりにするとき、私たちは、あらためて今日の「クスリ万能」ともいえる精神科医療のあり方を見直さざるをえない。」(訳者あとがき)
強迫観念、乖離、空虚感、離人体験などの様々な症状の内実が、病めるひとりの人物をとおして鮮やかに伝わる、完璧な症例研究である。

目次

はじめに
第1章 生活史
第2章 慰安状態と恍惚
第3章 恍惚期、歓びの感情
第4章 基底にある病態
第5章 均衡状態、そして全体の経過
訳者あとがき
資料
索引