みすず書房

モーツァルト《フィガロの結婚》読解

暗闇のなかの共和国

判型 四六判
頁数 352頁
定価 4,950円 (本体:4,500円)
ISBN 978-4-622-07299-7
Cコード C1073
発行日 2007年6月1日
備考 現在品切
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モーツァルト《フィガロの結婚》読解

「《フィガロの結婚》を啓蒙の模範的な、そして最高の達成のひとつとしてとらえるのがわたしの立場である。(……)わたしには、モーツァルトの音楽、なかでも後期のブッファの傑作群と、ヨーロッパ啓蒙主義、特にフランス18世紀の哲学者たちによる「ユマニスム」の創造と実験を経て、フランスに〈共和国〉というまさに多様性と統一性の同時的な実現を目指す共生の形式が生まれたという事実のあいだには、まことに意義深い平行関係が存在するように思われるのだ。」(本文より)
男女の結びつきが家父長制と宗教に縛られ、男性成人のみが家長の資格において政治社会のメンバーと認められた近世身分制社会に、フィガロとスザンナという政治的公共圏の外に追いやられた二人を物語の中心に据えた、フランスの戯曲作家ボーマルシェの『フィガロの結婚』。この作品が胚胎する身分制的・世襲制的な秩序の解体へのエネルギーを、ダ・ポンテの台本とモーツァルトの音楽は、意志的に作られた新しい公共的な世界としての〈共和国〉への飛翔へと、みごとに解き放ってみせた。その途方もない新しさは、どのような音楽的彫琢によって生み出されたのか。
リブレットとスコアにつねに立ち戻りながら、戯曲とオペラ両作品の繋がり、そして懸隔を確かめ、オペラ《フィガロの結婚》の魅力と秘密を、詳細かつダイナミックに描いた、類のないテクスト読解。

目次

I プロローグ——どのようにアプローチするのか
II 抗争的世界の創出
III 《フィガロ》の「社会」——身分・アイデンティティ・性
IV 女たちの闘い
V 家族の誕生——対立関係の解消
VI 暗闇のなかの〈共和国〉
VII エピローグ——〈啓蒙〉のテクスト、〈啓蒙〉のオペラ


《フィガロの結婚》——音と映像
あとがき
図版一覧