みすず書房

〈たとえば戦後の諸改革について、日本人である幣原喜重郎に憲法第九条の最初の提案が帰せられるとしても、そのほかの多くの改革において、占領軍側のホイットニーやケーディスなどの提案がじつに多く活かされてきたことを認めなければならない。外国人に帰せらるべき功績は、すべて外国人に帰するような正直な態度で日本の近代史が書かれる時、それこそほんとうに日本的な日本歴史ができるのではないか〉
(チェンバレン『日本ふうのもの』1965)
日米交換船で帰国後、海軍の軍属としてバタビアで勤務、敗戦をへて『思想の科学』を創刊。本企画は、1946年から2007年まで、鶴見の多岐にわたる活動を、数多くの単行本未収録作品も含め、書評を中心に本を主題とした文章を通して、はじめて年代順に精選・編集するものである。さまざまな意味で時代を画した本を媒介に、アメリカ哲学の紹介から大衆芸術への着目、転向研究、弱きものへの共感など、60年余にわたる鶴見の思考の柔軟性と一貫性が、ここにくっきりと浮かび上がる。
「戦後」とは何か。本企画が、過去に真摯に向きあう新しい戦後史の読み方の一助になることを願う。全3巻。
第1巻(1946-1969)には、アメリカ哲学やアメリカ漫画の紹介から、丸山真男『現代政治の思想と行動』、ドグラ・マグラの世界、吉本隆明『丸山真男論』、『ガロ』の世界、『荒地』の視点、朝鮮人の登場する小説等55編を収録。巻頭に未発表講演録「読書案内人」(2000)を付す。

目次

はじめに思うこと
読書案内人
I 1946—1950
『モリスの記号論体系』/ハヴェロック・エリス『自叙伝』/ウォー『アメリカ漫画の歴史』/シモンズ『ドストエフスキ』ほか
II 1951—1959
丸山真男『現代政治の思想と行動』/柳宗悦『民芸四十年』ほか
III 1960—1969
大仏次郎『鞍馬天狗』/ドグラ・マグラの世界/吉本隆明『丸山真男論』/『ガロ』の世界/桑原武夫ほか

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