みすず書房

ジョンソン博士の『英語辞典』

世界を定義した本の誕生

DR JOHNSON’S DICTIONARY

判型 A5判
頁数 320頁
定価 6,380円 (本体:5,800円)
ISBN 978-4-622-07336-9
Cコード C1022
発行日 2007年12月19日
備考 現在品切
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ジョンソン博士の『英語辞典』

「わが国には文法も辞書もなく、この広大な言葉の海をわたるための海図も羅針盤もない」(英国国教会主教、ウィリアム・ウォーバートン、1747)——。イギリスに先立つこと百数十年、イタリアとフランスは辞典編纂のためアカデミーを創設、何人もの人間を投入して半世紀近くをかけた辞典をつぎつぎに完成させていた。遅れをとったイギリスにとって、自国の由緒正しさを証明するものとしての英語を確認し、永久に確定するための辞典をつくることは、国家の急務であった。
この〈帝国の道具〉としての辞典編纂をひとりで成し遂げたのが、かの有名なサミュエル・ジョンソンである。詩人、作家、翻訳家であり、批評家、政治評論家、書誌学者、歴史家…多伎にわたる才能をそなえたジョンソンがそれらの知の技法を結集させた『英語辞典』は、1755年の刊行以来、現代に至るまで、後続の辞典編纂に影響を与えつづけてきた。
ボズウェルの『サミュエル・ジョンソン伝』(1791)に描かれた姿ばかりがひとり歩きをしてきたジョンソンであるが、著者は本書で、リプリントからCD-ROM版まで種々のかたちで現在も流通する彼の『英語辞典』に切り込んだ。そこから浮かび上がるのは、科学への熱狂、活字文化の興隆、娯楽と消費に彩られた18世紀ロンドンと、そこに生きたジョンソンの素顔である。夢と失望、憂鬱症とおどろくべき活力。30歳を過ぎたばかりの気鋭の新人が、精緻な研究成果をユニークなスタイルにまとめあげたデビュー作。

目次

謝辞
Adventurous あくまで挑戦の冒険魂
Amulet アン女王のお守り
Apple 英知のもとはリンゴよりペトラルカ
Bookworm 円熟した本の虫
Commoner オックスフォードの自費学生
Darkling がまんと暗中模索の時
to Decamp 機を見てロンドンへ
to Dissipate 暗い世界の探検
English 懸案の英語辞典
Entrance ゴフ・スクウェアでの仕事始め
Factotum 写学生六人の横顔
to Gather 収集方針はまず読書
Higgledy-piggledy 千々に乱れる編纂作業
Lexicographer 定義における辞典編纂者の苦悩
Library 図書館のような辞典
Melancholy 長びく憂鬱症
Microscope 謎めく世界が見える顕微鏡
Network 難解な言葉の網模様
Nicety 美妙な表現、微妙な表現
to Note 偏見に満ちた正しい英語
Opinionist 本音が垣間見える
Opulence 豊壌な都市の楽しみ
Pastern 名人も馬脚をあらわす
Patron 名目だけのパトロン
Philology もう一踏ん張りの英語史と文法
Pleasureful 物語あふれる辞典
to Preface やがて悲しき序文の言葉
Publication 世に評価を問う
Reception 世の喝采をあびる
Triumphant 雷名とどろく覇者ジョンソン
Ubiquity 略述本、世界中に流布
Variety 流転する記述
Weightiness 歴代の英語辞典に残る影響力
X レントゲンを知らない時代と現代とのギャップ
Zootomy 労作の解剖分析で知るジョンソン像

原注
訳者あとがき
図版一覧
見出し語索引
事項索引
人名索引