みすず書房

国政の花道で見得を切った政策が、私たちの生活をいかに変えてしまったか。劇場型政治が残した「負の遺産」のなかで、今どんなことが起きているのか。
教育問題、格差社会、犯罪・事件、軍備・戦争…。靖国参拝、教育基本法改正から太平洋戦争の傷跡、国際社会の軋みにまで繋がる問題点を、辛口に論じた最新時評集。
「このコラムを書くにあたって、心掛けていることがある。……主張があるわけでもないのに、担当者として書きこなしているにすぎない文章によく出会う。故事や本の引用から説き起こし、何を問題にしているのか分からない前文が続き、後半で話の話題に関連づけて、昔も今も、彼の国も我国も同じといった無意味な結論に終わる。起承転結の形式をたどっているににすぎない、と思えるものもある。Aの意見と反Aの意見を整理し、足して二で割る式の意見を良識として述べているものもある。そんな文章は、あるいはそんな思考はしたくないと努めてきた。」(「あとがき」より)
いま、政治・社会・文化を考えるうえで何が最も大事な論点かを問う、洞察に満ちた書。ほかでは語られていない重要な事実をふまえた問題提起がなされている。

目次

メコン源流のキリスト教の村/「見得」の選挙/涅槃のホテル
お茶と無為を楽しむ/「排除」という分類/民衆運動としてのインド仏教
靖国参拝の波紋/新聞で知りたい/残留孤児の内なる悲鳴
「格子問題」が問いかけるもの/教育行政の犯罪/レオとの別れ
アジアの変化を表現する美術/テロとの対話、研究を
アジアの姿、もっと討論を/政治の言葉に注意/拷問による教育
宮崎被告の十六年/問題多い精神鑑定/船上から見る社会/ネジキの慰め
病む教師が語るもの/神託のような精神鑑定書/異文化と病
人格の完成をめざして/少子化対策とは多様な文化を活かすこと
ハンセン病問題が教えるもの/熱帯林を歩く/わが朋、新日系フィリピーノ
松本被告の控訴棄却のでたらめ/大気汚染問題にひそむもの/メコンへの偏愛
夜更けのマンションの子どもたち/佐世保女児殺害事件から二年
教育基本法改正の道徳心/教育基本法作成過程の重み/真の最高裁判所を
つつじの山/サッカーと戦争と宗教の抱擁/藤田嗣治の戦争画の分析を
発達障害を疑う/若者が受け取る意味の危うさ/速度と子どもの非現実感
中国貴州の少数民族/小泉首相が靖国参拝にこだわる理由
阿倍ナショナリズムの行方/悲哀とともに流れる長江/世界宗教者平和会議
北の海の事件に思う/キリスト教と同志社小学校/黄金のベンガル
東京都教育委員会による転向強制/アッサムの紅茶は誰が摘んでいるのか
赤いシャールー/大杉栄の死体鑑定書を読む/北朝鮮の核実験と人間の連帯
教育現場での不正の陰で/単位偽計と子どもの権利/ヤンゴンの街で
埋められなかった母の脚/政治のなかのフェティシズム
金大中事件に見る棄民政治/「とともに、」は改正教育基本法の核
フィリピンでも手術演習/家族歴史学の勧め/クリスマスの死刑執行に思う
「硫黄島からの手紙」の浅薄な読み方/民間人校長になっていた文科省役人
広島県教委の不当労働行為/沈黙を破り始めたイスラエル元兵士
中教審の委員はどんな人/文化の焼き物と文明の焼き物
苦難を生き抜く中国人労工/海南島の悲惨/海南島性暴力被害者のよるべなさ
人の生命は甘美なもの/依頼者を騙した花岡「和解」/中教審会長による威し
猫の目とカササギ制服/パフォーマンスを求める東京都民
つっぱり老人の山里、高知県大川村/台湾の元慰安婦/杜甫の愛した植物
自殺対策を決めた内閣の自殺/国家に病む人びと——北朝鮮難民に
お婆さんの手/東シナ海を廻る人生の旅/温泉愛国主義/沖縄戦新聞
茶の若葉に湯をそそぐ/光市事件をめぐる格差社会の脅迫/死刑と憎悪と悲哀
おじいさんは助けてくれない/比較文化と精神医学/ポストドクター
雲南城市への旅/増え続ける体育系校長
アイスランドのレイキャビク・マラソン/アークレイリ植物園
首相の病院逃げ込み/ミャンマーと日本の僧侶に/殺すな、殴るな
新聞労働者、あなたもか/ポツダム宮殿の夜/ドイツ抵抗者の復権
全国学力テストの欺瞞/「知る権利」の誤用/金門島のもてなし
知事広告は独裁化の芽/ベンガルの嵐/ベルリンの自助組織
イルミネーション家族/超近代兵器の蜜/年末のトンの村で
女たちの日曜日、香港/中高年のあいさつ言葉/災害救援学講座の四年
温暖化と思考のゆらぎ/うつ状態はうつ病ではない/映画「我らの日々のパン」
自衛艦内の民主的人間関係/アンナプルナ/トップの責任とは
東京都教育委員会の圧制/ネパール王制崩壊/ソ連国境の地下要塞

あとがき

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