みすず書房

「〈美〉とはなにかを考えることは、〈人間〉とはなにかを考え〈人間〉が太古の昔から現代にいたるまで、どんなことを考え、なにをしてきたかを考えることにほかならない。(…)美と出会うということは、美を生きることにほかならないのだ」。
芸術とはなにか。美を生きるとはどういうことか。そんな根源的な問いかけにたいする、汲めども尽きぬ源泉ともいうべき26の人物および事蹟(AtoZ)を繋ぎあわせて論じる、芸術思想史の大著である。
時代や洋の東西をも超えた幅ひろい教養と鋭い見識。太古から現代まで人類知を照らしつづける26の星座。各章とも、評伝としても、作品解釈としても、芸術エッセイとしても、入りやすくてしかも奥がふかい。
美と生きかたをめぐって、かれらは何をなしえたのか、何ができなかったのか。なぜ神格化されたのか、なぜ忘れ去られたのか。
太古から現代まで人類知を照らしつづける26の星座。圧倒的な知性と教養で読み解く、美と芸術の歴史。

目次


A レオン・バティスタ・アルベルティ 近代の始まり
B 與謝蕪村 不用意という方法
C 屈原 植物器官の視点/古代アジア文学
D 大乗寺 観[み]ることと観[かん]じること
E ワシリィ・エロシェンコ 童話にならない童話のための非擬人法
F ミシェル・フーコー 「人間」を離脱して人間になる
G アルベルト・ジャコメッティ 眼を裏切る掌
H 埴師—土師 すべては掌のなかの土から始まる
I 北一輝 詩の捨てかた
J イエス 十字架が意味するもの
K 土田杏村 「大学」の外で築く思想
L ラスコー 生命と触れ合う絵
M アナ・メンディエタ 芸術以前へ
N 中井正一 生きかたの問いとしての美学を求めて
O 岡倉覚三 美術史を生きようとした男
P マルセル・プルースト 未完という完成
Q ドン・キホーテ 「狂気」のゆくえ
R 幸田露伴 「近代」を丸呑みするまなざし
S 坂口安吾 「必要」の形而上学
T 敦煌莫高窟 土と植物が作る古代アジアの美
U 浮世又兵衛 波乱を画風[スタイル]に生きた絵師
V ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ 裡なるピアニッシモを求めて
W シモーヌ・ヴェイユ 世界を身体全体で捉え考える
X フランシスコ・デ・ザヴィエル 異国の美とはなにか。あるいは〈X〉をめぐって
Y 尹東柱 一篇の詩の運命
Z 張彦遠 作品のない美術史
あとがき
人名索引
事項索引

書評情報

中川素子(文教大教授)
信濃毎日新聞2009年8月23日
四方田犬彦
新潮2009年9月号

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