みすず書房

アドルノ 文学ノート 1

NOTEN ZUR LITERATUR

判型 A5判
頁数 440頁
定価 7,260円 (本体:6,600円)
ISBN 978-4-622-07470-0
Cコード C1010
発行日 2009年7月9日
備考 現在品切
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アドルノ 文学ノート 1

〈エッセーは、暗黙のうちに、非同一性の意識を斟酌している。それはラジカリズムを標榜しないことにおいてラジカルであり、原理への還元を極力慎しみ、全体に対して部分を強調する点において、断片的なものにおいて、ラジカルである。…一分の隙もない概念の秩序であっても存在者とひとしいわけではないのだから、エッセーは、演繹的にせよ、帰納的にせよ、完結した構成を目指したりしない。…いってみればエッセーにとっては方法に反することが方法である〉
本書の巻頭におかれた「形式としてのエッセー」で、アドルノは、ルカーチ『魂と形式』に照応するかたちで、全体性が失われた現代世界にあって、時代にふさわしく、かつ時代の問題性に肉薄する言語表現のあり方、批評のスタイルを描いた。教授資格論文『キルケゴール』からホルクハイマーとの共著『啓蒙の弁証法』『ミニマ・モラリア』『アルバン・ベルク』『美の理論』『ベートーヴェン』『否定弁証法』にいたるまで、アドルノの著作はすべて、この精神に貫かれている。
ここに初めて全訳で刊行される『文学ノート』は、まさに「エッセー」の宝庫であり、その一篇一篇はどれも、20世紀批評を代表する名品ぞろいである。この第1巻には「抒情詩と社会」「アイヒェンドルフの思い出のために」「ハイネという傷」「句読点」「バルザックを読んで」「ヴァレリーの偏倚」「プルースト小解」「ブロッホの『痕跡』」、ルカーチ論「無理強いされた和解」、ベケット論「『勝負の終わり』を理解する試み」など17篇を収める。全2巻。

目次

I
形式としてのエッセー
叙事文学の素朴さ
現代小説における語り手の位置
抒情詩と社会
アイヒェンドルフの思い出のために
ハイネという傷
シュルレアリスムをふりかえる
句読点
代行者としての芸術家
II
『ファウスト』の最終場面によせて
バルザックを読んで
ヴァレリーの偏倚
プルースト小解
異国の言葉
ブロッホの『痕跡』——一九五九年の新増補版に寄せて
無理強いされた和解——ジェルジ・ルカーチ『誤解されたリアリズムに抗して』
『勝負の終わり』を理解する試み
解題

書評情報

細見和之(大阪府立大学教員・ドイツ思想専攻)
週刊読書人「上半期の収穫から」2009年7月31日(金)
四方田犬彦
新潮2009年12月号
細見和之(ドイツ思想)
図書新聞2009年12月12日(土)
高橋順一(早稲田大学教授・思想史専攻)
週刊読書人2010年4月23日(金)
鷲田清一
朝日新聞「折々のことば」2016年1月5日

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