みすず書房

中世の幽霊

西欧社会における生者と死者

LES REVENANTS

判型 A5判
頁数 416頁
定価 6,600円 (本体:6,000円)
ISBN 978-4-622-07516-5
Cコード C1022
発行日 2010年2月19日
備考 在庫僅少
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中世の幽霊

幽霊の存在を信じることは、いつの時代にも共通しているように思える。けれどもそれにもまた歴史はある。中世においてこの「信仰」は何を意味していたか、どうすれはそれを理解できるのか? いったい誰が、誰のもとに、どこから、どんな姿形をして、なぜ「戻って」きたのだろうか?
本書が視野に収めているのは、後期古代からルネサンス前夜までの千年だが、それは異教の伝統的信仰と徐々にキリスト教化されていく「飼いならされた死」(アリエス)の儀式、「己れの死」をめぐる苦悩、そして「汝の死」をめぐる悲嘆が次々と継起し、たがいに結びついた時代であった。
本書の目的は、中世という時代における死者記念の社会的な機能を論じるものである。過去の人間はいかにして彼らに所縁ある死者を記憶に留めようとしたのか、いやそれ以上に忘れようとしたのか、そして死者の一部が、いかにして忘却を願う生者の意志に逆らうかのように反抗的に振る舞い、彼らの思い出を呼び覚まし、夢の中に侵入し、家に取り憑いたのかを考察する。
歴史人類学の最前線で活躍するシュミットの力量が発揮された鮮やかな研究書。

目次

第一章 幽霊の抑圧
遺産や対抗モデル/聖書と幽霊/アウグスティヌスとエウォディウス/アウグスティヌスとノラのパウリヌス/仲介役としての想像力/幽霊——物体、それとも模像?/聖アウグスティスヌスの後継者たち/聖人と悪魔の間/中世的な物語の誕生/死者のための典礼の発達
第二章 死者を夢に見る
見えるものと見えないもの/法悦状態における死者の幻視/死者の夢を見ること/キリスト教的自伝と幽霊/悔悛の夢/一般信徒——最初の著作/ジョヴァンニ・モレッリの悪夢
第三章 幽霊の侵入
現在への賛辞/修道院における幻視/ローマとクリュニーを結ぶ軸/マルムーティエ——修道士の共同体/クリュニー——修道士と貴族
第四章 驚くべき死者たち
ミラビリア——驚異談/物語の「世俗化」/「宮廷付き聖職者たち」/ボーケールの幽霊
第五章 ヘルレキヌスの一党
オルデリク・ウィタリスによる証言/「野蛮な狩猟」の歴史はどれくらい古いのか/選ばれた者と呪われた者/色彩を帯びた死者の霊魂/選ばれた者たちの行列、呪われた者たちの騎行/ヘルレキヌスの一党の政治的な用途/ヘルレキヌスかアーサー王か?/死者の軍勢の悪魔化
第六章 飼いならされたイマジネール?
新しい話し言葉/シトー会の貢献/説教の装置——托鉢修道会/モンタイユーの彷徨える霊魂/ヨークシャーに現れた「霊」/ブルターニュの幽霊
第七章 死者と権力
ギー・ド・コルヴォの幽霊/アルント・ブッシュマンの祖父/霊を識別する能力/君主と死者/フォーヴェルのシャリヴァリ
第八章 時間、空間、社会
個人的な時間と集団的な時間/死者の暦/死者たちの一週間/昼と夜/幽霊はどこから来るのか?/内と外/墓地/農耕地を取り囲む未開の周縁/幽霊譚——社会的関係の結節点/親族関係——姻戚/親族関係——親子/霊的な親族関係
第九章 幽霊を描く
幽霊の身体/霊的なものと身体的なもの/死者の言語/死者のまとう衣装/幽霊を描いた図像/幻影の誕生/幽霊と死骸趣味/横臥像は幽霊か
結論

原注
訳者あとがき

第1刷への訂正のお知らせ

本書第1刷(2010年2月19日発行)307頁の本文1行目に、つぎの誤りがありました。訳者ならびに読者の皆様に謹んでお詫びして、以下のとおり訂正いたします。(2010年2月)

(誤)死者は生者として財産を…  (正)死者は生者をして財産を…

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