みすず書房

「いま感じているのは、音楽の喜びだけである。音楽がまたできる、指を通じて全身が、自分の全存在が楽器に触れ、聴いてくださる方々と、そしてこの世界と一体になっていく、その感覚だけである。」

半世紀にわたって世界中で演奏をつづける舘野泉による初のピアノ音楽論集。1970年代のシベリウス論から、北欧音楽はもちろん、グラナドス、シューベルト、シューマン、武満徹、ピアソラ、セヴラック、最近の吉松隆までについての文を精選した。
「騎馬民族が歴史を書かないように、演奏家も歴史を書かず、決して安住が出来ずにさすらいの旅を続ける人種だ」とかつて舘野は記した。しかし、一冊となったこれらの文章を読むとき、ピアニスト舘野泉のファンのみならず音楽を愛する者なら誰もが感じるのは、それぞれの作曲家の魅力と秘密にもまして、自由な風の吹きわたる広がりの気持ちよさである。

目次

I
シベリウスのピアノ小品集
演奏するにあたって
劇的人間、ノルドグレン
シベリウスのピアノ音楽に寄せて

II
メラルティンの組曲「悲しみの園」
叙情の人、ヘイノ・カスキ
イルマリ・ハンニカイネンのピアノ音楽
シベリウス「五つのスケッチ」
シベリウス「八つの小品」
グラナドスの「ゴイェスカス」について
フィンランドのピアノ名曲
クーラ「二つのピアノ小品」
ラウタヴァーラのエチュード集
ノルドグレン「小泉八雲の怪談によるバラード」
メリカントのピアノ・アルバム

III
シューベルト晩年のソナタ
シューベルトの即興曲をめぐって
シューマン「幻想曲ハ長調」
若き日のシベリウス
パルムグレンに寄せて
リラの花、郷愁の響き
名ピアニスト・ハンニカイネン
武満徹のピアノ曲
パルムグレンのピアノ曲
タンゴこそ最高
カスキの静かな光
ナザレ—とピアソラ
シューベルトに寄せて
ウーノ・クラミ、森との対話

IV
ひまわりの海——セヴラック
シベリウスの「フロレスタン」
レーヴィ・マデトヤのピアノ曲
左手のためのピアノ作品集
アルバム「タピオラ幻景」に寄せて
その左手のために
「吉松隆の風景」に寄せて
あるピアニストの日記

おわりに

書評情報

笠間直穂子
週刊朝日2010年12月31日
吉松隆(作曲家)
しんぶん赤旗2010年11月28日(日)
音楽の友
2010年冬

関連リンク