みすず書房

ドイツ国歌の複雑怪奇な変遷はドイツ史の紆余曲折を如実に物語っている。/
ヒトラーと第三帝国は芸術や音楽に何をしたか。そこには抑圧とか統制という言葉では言い表せない権力者・表現者・民衆・組織間の生々しい牽制があった。/
第三帝国崩壊直後、指揮台の主を失ったベルリン・フィルを最初に率いたボルヒャルトはどんな指揮者だったのか。……

ヴァイマル時代から第二次大戦期、そして戦後から現在まで、音楽をめぐる逸話から人々と政治、社会の相克が浮かび上がる。ベルリン〜ドイツ現代史の深部に思いを馳せた文章を収録した。

ベルリン・フォルクスオーパー、ベルリン・ユダヤ文化同盟劇場、ティターニア・パラスト、デルフィ・パラスト、ベルリン・アンダーグラウンド・シーン……。そうした舞台で何が起こり何が夢見られていたのか。各頁から、古典名曲、流行歌、ワルツ、タンゴ、スウィング・ジャズにロックが坩堝状に鳴り響き、狂騒と悦楽、差別と抵抗、欺瞞と確信など、渦中に生きた人々の想いや運動が一大交響曲のように響いてくる。

目次

第 I 部 ベルリン音楽異聞
イントロ
1 ドイツ国歌の怪——替え歌から国歌へ
2 ヒトラーの文化帝国
3 幻の指揮者レオ・ボルヒャルト
4 カラヤンとオペラ原語上演
5 忘れられた歌劇場——ベルリン・フォルクスオーパー
6 束の間の夢——ベルリン・ユダヤ文化同盟劇場
7 ヒトラーに褒められたオペラ《ペール・ギュント》
8 ヒトラーに嫌われたオペラ《今日のニュース》
9 ベルリン・サイレント映画の音楽——《戦艦ポチョムキン》と《メトロポリス》
10 ティターニア・パラストの盛衰
11 踊り場ベルリン——デルフィのばあい
12 辺境アンダーグラウンドの街ベルリン——天才的ディレッタント「ディー・テートリッヒェ・ドーリス」
第 II 部 ベルリン音楽異聞 痕跡巡り(写真+コメント)

あとがき
謝辞
初出および原型一覧
参考文献
索引

書評情報

Tower Records Intoxicate
2010年12月20日号Vol .89
ミュージック・マガジン
2011年2月号
中原昌也
文学界2011年3月号
広瀬大介
レコード芸術2011年7月号

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