みすず書房

夕凪(ゆーどぅりぃ)の島

八重山歴史文化誌

判型 四六判
頁数 292頁
定価 3,960円 (本体:3,600円)
ISBN 978-4-622-07735-0
Cコード C0039
発行日 2013年8月15日
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夕凪(ゆーどぅりぃ)の島

石垣島から沖縄本島まで400キロ、台湾まで270キロ。先史時代の八重山は縄文・弥生の文化圏の外、人々はヤドカリの穴から生まれたという神話をもつ。15世紀、八重山は琉球王府に征服される。17世紀、中国の冊封体制下にあった琉球は、薩摩の侵攻によりヤマトの幕藩体制にも組み込まれ、八重山は幾重もの支配を生きた。そして明治の世、琉球処分により八重山も近代日本の一部となった。
しかし、太平洋戦争が始まると、島の大女神は神司(つかさ)に「戦は敗ける」と託宣する。石垣島に米軍上陸はなかったが、マラリア猖獗地帯への軍命による避難で住民3647人の命が失われた。
琉球・八重山が日本国になったのは、たかだか百余年前。八重山を「日本」や「沖縄」と安易に同一視はできない。尖閣問題で揺れるなか、国防の最前線などにされてはたまらない。八重山には八重山の視座がある。
石垣島に生まれ育った著者は、祭や唄、風習を調べ、戦跡をめぐり、言葉の古層に分け入る。ヤマト中心の歴史には収まらない島々の驚くべき時空世界を掘り起こす。
自然や風土を守り、平和ゆえの風物の輝きを喪わないことが未来をつくるだろう。闇の手前の夕凪(ゆーどぅりぃ)の島から、生者と死者、鳥、虫、海と山の声が届く。

目次

まえがき

第一部
アーマンの末裔
台風/ヤドカリから生まれる/香り木(かばしゃ)の下で/黒いコッカーラ/危機に瀕する島の生命……/蓬莱米/役立たずの男稲(びぎまい)/闘牛

海と山をつなぐもの
一七七一年の大津波/マーザーピィー/伊原間村のアカフツィと大浦山のティラ石/物の怪と水石/魚垣/風向きを見る術

人世・ヤマト世
シャコガイの時代/パイパティローマ探索/拉致事件と人頭税時代/墓に入る/犬の生と死祝いと「命どぅ宝」/先島の民の視座は……/台湾と沖縄/尖閣事件から見えること

カミゴト
神のゆくえ/びっちんやま/於茂登岳の神について/神司/切支丹宗門改

士族と百姓の祭礼
アンガマの起源/アンガマ衣装と若者/登野城の結願祭/旗頭本に見る植物

唄は国境を越え
あぱぴあぽん 宇宙と死 三線の皮と絃 野底村跡 文化工作・山田耕筰と宮良長包/宮良長包の国家観/宇根ぬ屋ユンタ/「執念の毒蛇」ハワイを行く/唄は国境を越え、胸をうつ/咲かない椿

留魂の碑
わが身、つで、みちど……/国捨てて命あるべし/石垣島住民全滅を目指した濠で/昭和二十年八月二十七日の不敬罪/絞首刑に処せられた兵士の遺書/朝鮮人の魂を故国に帰/民族の誇り/風音の叫び/冬の月下美人──風土を喪ってはならない

第二部
八重山教員思想事件と青春群像
八重山のハンセン病

あとがき
八重山歴史地図年表

書評情報

田中優子(法政大学教授・近代比較文化)
朝日新聞2013年10月13日(日)
上江洲儀正(南山舎代表)
沖縄タイムス2013年10月12日(土)
砂川哲雄
八重山毎日新聞2013年10月6日(日)
持田叙子(日本近代文学研究者)
毎日新聞「2013年この3冊」2013年12月22日
季刊リトケイ
2013年冬

関連リンク