みすず書房

ヒトの変異【新装版】

人体の遺伝的多様性について

MUTANTS

判型 四六判
頁数 384頁
定価 4,180円 (本体:3,800円)
ISBN 978-4-622-07885-2
Cコード C0045
発行日 2014年9月10日
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ヒトの変異【新装版】

その昔、重い奇形をもつ人々は「怪物」とみなされた。いま、奇形は遺伝子の働きを知るうえで、貴重な手がかりとなっている。その間には体づくりの謎をめぐる、数百年にわたる混乱と探究の歴史があった。ヒトの変異の博物学・文化史・科学史は、不可分に縒り合わされている。
「私たちはみなミュータントなのだ。ただその程度が、人によって違うだけなのだ」。科学者は違いの原因となる遺伝子を探し、その文法を見出す。それが「私たちはなぜこのような形をしているのか」という問いへの答えにつながる。重い奇形の原因が、約30億の塩基対のうちのたった一つに起きた変異である場合もある。体づくりの精妙な仕組みに驚嘆し、多様性の謎が解けると同時に、違いの源がいかに私たちの直感に反して微かであるかを発見する。発生生物学者たちを虜にするそのスペクタクルを、本書は垣間見せてくれる。
人体の遺伝的多様性の原因を科学的に解明することは、不当な差別を助長するのではなく、無化するはずではないか? 著者が改めて提起するこの問いが、賛否に拠らず軽視できないものであることは、「怪物」から「遺伝子のわずかな変異」への旅を知った読者には明らかだろう。

[初版2006年6月9日発行]

目次

序章
第1章 ミュータント──はじめに
第2章 完全な結合──胚の体軸について
第3章 最後の審判──顔について
第4章 クリーピー・ベル──手足について
第5章 わたしの骨の骨,わたしの肉の肉──骨格について
第6章 ツルとの戦い──身長について
第7章 完全なものへの欲望と追求──性について
第8章 うたかた──皮膚について
第9章 節制生活──老化について
第10章 多様性──エピローグ

謝辞
監修者あとがき
訳者あとがき
注釈
参考文献
索引

書評情報

矢島智子(記者)
東京新聞「記者の1冊」2015年8月9日(日)