みすず書房

「白日の中のこの影。絵画は否定し、消去することはできるだろう。だが、芸術はそのとき、まさしく、いよいよその影をあらわにする。」
近現代美術史からポスト構造主義まで、分野を越えてラディカルな思考を遺した批評家、宮川淳。アンフォルメル、反芸術、ネオダダ、ポップアートなど、現代美術が最も賑やかだった1960年代の美術批評を精選してまとめる。没後30年をへて、いまなお輝きを失わない、イメージと観念への透徹した眼差し。
「それは論理というものの本質に属しているポエジーの明晰さというべきであろう」(建畠晢)。

目次

アンフォルメル以後
変貌の推移  モンタージュ風に
反芸術  その日常性への降下
“永遠の可能性”から不可能性の可能性へ  ヴァレリアンであるあなたに
反芸術以後  美術界の現状と今後
芸術・作品・批評
オブジェの象徴的メタフォア  はじめてのジャスパー・ジョーンズ展を見て
絵画とその影
影の侵入
前衛芸術の新しい方向
不可能性の美学
不在の前衛と前衛の不在
ポップ・アート  あるいはアメリカ美術の“幸福”
全体性への欲求  タブローから《環境》へ
現代芸術は有効か
千円札裁判私見
絵描きが“機械”になりたがるわけ
芸術の消滅は可能か
透明幻想
手の失権  シンボルとしての機械と手工的な思考
絵を見ることへの問い  〈陳述〉と〈反陳述〉との交錯
絵画における近代とはなにか
一九一二年・パリ
一九四五年・パリ
パリ美術界で成功する方法

ポエジーの明晰さ  建畠晢