みすず書房

裸の人 2

神話論理 IV-2

判型 A5判
頁数 568頁
定価 9,350円 (本体:8,500円)
ISBN 978-4-622-08155-5
Cコード C1010
発行日 2010年2月25日
備考 現在品切
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裸の人 2

天界と地上のコミュニケーションの決定的断絶を代償に、人類は自然から文化へと移行した。鳥の巣あさりを追って、南北アメリカ800余の神話を踏査し、たどり着いたのは北アメリカ北西海岸の狭隘な一帯、そこは先史時代以来アジアからの移住民が南北両大陸へ拡散していった中心地であり、極端なまでに多様な言語を話す小規模な集団が入り組み居住する地域である。ここに見いだされるのは探究の初発から俎上にのぼってきた主要テーマのすべてを、みずからのうちに凝縮させた縮約モデルであった。

〈われわれと名のることにより本書の主体は,匿名的思考にさしだされた実体なき場所たらんとしている。そのとき匿名的思考はこの場にみなぎり、自己自身に距離をおき、みずからの真の構えをとりもどしてそれを実現し、みずからの無二の本性に内在する制約にしたがって自己編成をとげていくだろう。〉(「終曲」、本書783ページ)
こうして最終章「終曲」で使命を解かれ、一人称で語る権利をとりもどした著者は、ふたたび「わたし」を用いて語りだす。生きることと考えることの不可避の拘束のあいだで、神話により世界を分節して思考し、やがてはすべてが無に帰すことを知りつつ精神的努力を続ける人間の条件について。
レヴィ=ストロース100歳の生涯の探究に『神話論理』はどう位置づけられるのか。『神話論理』四部作は、レヴィ=ストロースという稀有な知性の、人が真新しい世界に直面したときの謎を解こうとしたブリコラージュの作業の現場報告ではなかったか。全巻を解説する「訳者あとがき」を付す。

目次

凡例
記号表

第5部 苦い知
I 天界の訪問
II ふたりの盲人
III コスモポリタニズムと外婚制

第6部 源流にさかのぼって
I 火と雨
II 結合

第7部 神話の黎明
I 二項操作子
II ただひとつの神話

終曲

訳者あとがき
文献
『神話論理』I‐IV 全巻神話索引(M1‐M813)
『神話論理』IV 総合索引

編集者からひとこと

『裸の人』2の刊行をもちまして、レヴィ=ストロース『神話論理』は邦訳全5冊が完結いたしました。原著刊行から四十年越しのシリーズ完結です。
フランス語版第 I 巻の出版は1964年、みすず書房はその二年後に日本語版版権を取得し、『野生の思考』(1976年)の名訳で知られる故・大橋保夫先生に、『野生の思考』の次に翻訳をお願いする予定だったときいています。構造主義が日本に本格的に紹介されつつあった当時、訳者は大橋先生をおいて考えられませんでした。
大冊のため共訳のチームが組まれ、じっさいに『野生の思考』の直後から翻訳が始まりました。しかし原著者の文章をつかみとる困難に加えて、訳語や文体をめぐる訳者間相互の厖大な調整、その上に諸事情も重なって、ようやく大橋訳「序曲」が月刊『みすず』に掲載されたのが1992年初頭のことでした(『みすず』1992年1月号・2月号に分載)。
全巻の翻訳態勢を見直し再スタートという矢先に、大橋先生は急逝なさいましたが(1998年)、動き出したプロジェクトは巨大な車輪が少しずつ回るように前進しました。第 I 巻・第 II 巻を単独訳された早水洋太郎先生は、大橋保夫先生門下です。第 III 巻と第 IV 巻1・2では、吉田禎吾先生・渡辺公三先生・木村秀雄先生を中心とする共訳になっていることはごらんのとおりです。それにしてもさらに年月がかかったのは、総力を結集して翻訳にのぞんでも、生い茂る神話の森の奥深くまでレヴィ=ストロースの踏み跡を見通すのはとてもむずかしいことだったからです。

著者レヴィ=ストロースの生前に日本語版をお目にかけられなかったのが悔やまれますが、これまで長いあいだお待ちいただき、さまざまに支えてきていただきました読者のみなさま、関係者のみなさま、本当にありがとうございました。 感謝申し上げます。(2010年2月)

書評情報

日本経済新聞
2010年3月7日(日)
依田彰
朝日新聞2010年3月14日(日)
毎日新聞
2010年3月14日(日)
今福龍太(文化人類学者)
読売新聞2010年4月5日(月)
橋爪大三郎
週刊読書人2010年5月14日(金)
加藤弘一(文芸評論家)
KINOKUNIYA 書評空間2014年4月17日