みすず書房

複雑性の探究【新装版】

EXPLORING COMPLEXITY

判型 A5判
頁数 360頁
定価 7,040円 (本体:6,400円)
ISBN 978-4-622-08607-9
Cコード C3042
発行日 2017年4月10日
備考 現在品切
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複雑性の探究【新装版】

本書は、〈複雑性の科学〉というパラダイムを、散逸構造理論の研究者、ニコリスとプリゴジンが論じた本格的入門書である。分岐現象、カオス、アトラクター、フラクタル、自己組織化などの概念を軸に、宇宙・生命・社会のさまざまなレベルに秩序形成過程を探り、新しい自然観・世界観を展望する。
[1993年8月初版発行]

目次

日本語版への序文
まえがき
プロローグ:転換の時代における科学

第1章 自然界における複雑性
1.1 複雑性とは何か?
1.2 物理化学系における自己組織化:複雑性の発生
1.3 熱対流、物理学における自己組織化現象の原型
1.4 化学における自己組織化現象
1.5 物理化学的複雑性と計算複雑性
1.6 我々のスケールにおける複雑な振舞いのさらにいくつかの例
1.7 再び生物系について
1.8 惑星および宇宙のスケールにおける複雑性
1.9 力と相関——まとめ

第2章 複雑系の用語
2.1 保存系
2.2 散逸系
2.3 力学的および熱力学的平衡:非平衡拘束
2.4 非線形性とフィードバック
2.5 第二法則の多様な側面
2.6 安定性
2.7 分岐と対称性の破れ
2.8 秩序と相関

第3章 動力学系と複雑性
3.1 相空間の幾何学
3.2 相空間の測度
3.3 可積分保存系
3.4 単純な散逸系における分岐:複雑性の原型の探索
3.5 2次元相空間における散逸系:リミット・サイクル
3.6 低次元系への逓減:秩序パラメータと標準形
3.7 再び相空間について:トポロジカル多様体とフラクタル
3.8 非可積分保存系:新しい力学
3.9 不安定運動のモデル:馬蹄写像
3.10 多次元相空間における散逸系:カオスとストレンジ・アトラクター
3.11 空間的に分布した系:対称性を破る分岐と形態形成
3.12 離散動力学系:セル・オートマトン
3.13 非対称性、選択、情報

第4章 乱雑性と複雑性
4.1 揺らぎと確率論的記述
4.2 マルコフ過程、マスター方程式
4.3 マルコフ過程と不可逆性:情報論的エントロピーと物理学的エントロピー
4.4 空間的相関と臨界的振舞い
4.5 時間に依存する揺らぎの振舞い:自己組織化の運動論と時間スケール
4.6 敏感さと選択
4.7 記号動力学と情報
4.8 非対称・多情報構造の発生
4.9 再び計算複雑性について

第5章 複雑性の統一理論に向けて
5.1 保存動力学系の一般的性質
5.2 散逸動力学系の一般的性質
5.3 統一への試み
5.4 確率と動力学
5.5 パイこね変換
5.6 時間対称性の破れた多様体
5.7 対称性を破る変換A
5.8 ギブズ集団とボルツマン集団
5.9 運動論
5.10 共鳴と光・物質相互作用
5.11 結びに

第6章 複雑性と知識の移動
6.1 平衡から遠く離れた条件下の非線形動力学と複雑性の模型
6.2 物質科学
6.3 細胞動力学におけるしきい値現象
6.4 気候変動の模型化
6.5 社会的昆虫の確率的振舞いと適応戦略
6.6 人間系における自己組織化

付録1 線形安定性解析
A1.1 基礎方程式
A1.2 線形安定性の原理
A1.3 特性方程式
A1.4 例
A1.5 カオス動力学を示す系

付録2 分岐解析
A2.1 一般的性質
A2.2 解の摂動級数展開
A2.3 分岐方程式

付録3 非可積分保存系における共鳴運動の摂動
A3.1 ねじれ写像
A3.2 回転数が有理数の場合の摂動の効果
A3.3 ホモクリニック点

付録4 時系列データから複雑系の動力学を再構築すること:気候変動への応用
A4.1 序論
A4.2 データ解析に対する理論的基礎
A4.3 気候のアトラクター
A4.4 結論と展望

付録5 原始の不可逆過程
A5.1 はじめに
A5.2 標準的宇宙模型
A5.3 ブラックホール
A5.4 不可逆性の役割

参考文献
訳者あとがき
索引